第24話 四聖獣
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自らを聖獣というこの男は、オトやショウの仲間なのか。
それに二人と違って目の前にいるのは人間だ。
確かに雰囲気は似ている。とはいえ、存在感が二人と比べると圧倒的に大きい。
『鑑定結果です』
種 族: 霊亀
成長度: 成体
スキル: 霊亀(成体)
霊亀であることは間違いないようだ。
この男が言うには、聖獣とは世界を守護する存在らしい。
そう言えば、同じことを麒麟が言っていた。
霊亀はさらに続ける。
この世界を滅ぼそうと企む者たちが存在しており、邪龍を産み出そうとしている。
その為にまず四凶と呼ばれる魔物達を召喚した、と。
四凶を滅ぼすべく四聖獣が動いた。
だが、四凶の力のほとんどを失わせることに成功したものの、四凶を操ろうとしていた者達の横やりのせいで四聖獣は命を落としかけた。
最後の力を振り絞って自身の分身とも入れる存在を産み出し、全てを託した。
それが、四聖獣の生まれ変わりの存在であり、今の自分もその内の一人だと。
「そもそも、お前はなぜ人の姿をしているんだ」
まず最初の違和感というか、オト、ショウとの違いはそれだった。
「霊亀の姿のままだと奴等に狙われ続けることになる。実際、儂は奴等に狙われ続けたが何とか生き延びることができた。だが、奴等もどんどん力を増してきており、一人では厳しい戦いになる。人の姿になって奴等の目を欺き、仲間を探しつつ奴等の企みを調べておったのじゃ」
「なるほどな。だが、なぜ人の姿になれるんだ?」
「聖獣は成体になると擬態能力を獲得するのじゃ」
「そうなのか」
オトとショウはまだ成体にはなっていないはず。
彼らは特別なのだろうか。
「人の姿だと、他の聖獣に出会っても分からないのか?」
「いや、恐らく分かるじゃろう」
それなら、と早速アトスは二人の所へ転移門を繋ぐ。
それを見ても霊亀は驚かない。
「オト、ショウ、ちょっと来てくれ」
「あっ、霊亀・・・・・・だよね?」
「その通りじゃ。まさか鳳凰と麒麟が揃っておったとはの」
「俺達はアトスに救われたのだ」
二人は霊亀にこれまでの経緯を話す。
・・・・・・
・・・
「なるほどの。ではアトス殿。儂もおぬしの従者になりまする」
「・・・・・・殿は要らん。対等に話してくれ。それが条件だ」
「ところで、聖人ってなんだ」
「おぬしのことじゃ」
「? 俺はただの人間だぞ」
「聖獣を二体・・・・・・もう三体じゃが、従者にしておいてただの人間というのはあるまい」
「そうなのか」
釈然としないアトスだが、割り切ってさらに尋ねる。
「で、聖人ってのになってるのは良いとして、人間と何が違う?」
「少なくとも、寿命は長命種以上じゃろう」
「ボク達はみんな長命種よりも長生きなんだよ」
「それに、生まれ変わることで記憶や知識を共有する。危険が迫った時の生まれ変わりでは上手く継承できないこともあるが、とにかく無限に生きると言っても過言ではない」
「但し、四凶のようなものに滅ぼされた場合は別じゃがな」
なるほど、それで『天敵』か。
「それから、おぬしはもはやその肉体に縛られることはないはずじゃ」
「意味が分からないんだが」
「肉体が滅びようと、おぬし自身は滅びぬ、という事じゃ」
「肉体が滅びるとどうなる」
「依代を見つけるまでは、そうじゃな。分かりやすく言うと幽霊のような状態になる。だが、幽霊と違うのはその状態がおぬしの本体であり、生命そのものであるということじゃ」
「そう・・・・・・なのか」
アトスは頭の整理がつかないようだ。
それも当然のことで、突然聖人だと言われ、肉体は依代に過ぎず生命の本体は幽霊のようなものと言われて簡単に『はい、そうですか』とはいかない。
それでも、アトスは職業柄よく分からないことは割り切って、あとで分割して考える癖が身に付いている。
「とにかく、まずはここを出よう」
これまで迷宮の異変を解決するたび、迷宮は崩壊を始めていた。
恐らく今回もそうなるだろうと思ったアトスは、早めに立ち去ろうと考えたのだ。
「ねぇ、アトス。霊亀には名前をつけてあげたの?」
「いや、つけてない」
「ほう。名前をいただけるのか。それは楽しみじゃの」
また名前を考えるのかと思ったアトスだが、これからずっと『霊亀』と種族名で呼ぶ訳にもいかないなと思い、名を考える。
霊亀、亀・・・・・・亀と言えば、ゆっくり歩く。
「霊亀の名はジョグでどうだ」
「なんか面白い名前だね」
「儂は気に入った。これから儂はジョグじゃ」
「ところで、お前達は『四聖獣』なんだよな」
「そうじゃ」
「ということは、もう一人居るってことだよな?」
「そうじゃ。あやつは四聖獣の中でもとびきり激しい気性のやつでの。生まれ変わったところを狙われてもあやつならきっと無事でおるじゃろう」
いつか会うことになるだろうなとアトスは思った。
気性が激しいらしいから、変な争いに巻き込まれてなければいいが、と心配する。
杞憂に過ぎないことを願いつつ。
──
「俺はマサムネの所に戻るが、お前達はどうする」
「騎士団の人と遊ぶの楽しいんだ。それに、強くなってる気がする」
「俺も騎士団との修行に戻る」
オト、ショウの二人は再び騎士団との修行に戻るようだ。
「ジョグはどうする?」
「儂は二人より進化しておるしの。そのマサムネとやらの所に行ってみようかの」
こうして四人は二手に分かれた。
「調子はどうだ」
マサムネとサダムネに声をかける。
「うむ。魔法ブロックは恐らくこれで完成だと思う」
「始まりのブロックはまだできていない。トリガー魔法が探知したことを受け取れていないのかも知れない」
「何の話じゃ?」
当然のことだが、霊亀は何も知らないのだ。
「紹介がまだだったな。こっちはマサムネとサダムネ。鍛冶師だ。俺が考案した魔法具を作ってもらっているんだ」
マサムネとサダムネはそれぞれ簡単に自己紹介と挨拶をする。
「こっちはジョグ。俺の新しい仲間だ」
「ジョグですじゃ」
「ところで、魔法具とはなんじゃ?」
アトスは魔法石と真帆素材、それから魔法の手について一通り説明と実演をする。
「ほうほう、これは面白いの」
それから、今二人に試作を任せている物について説明する。
「ほほう、なるほどの。で、今は行き詰っているんじゃな」
「そうだ。何かわかりそうか?」
マサムネが尋ねる。
「どれどれ・・・・・・ほほう、これは面白い仕組みじゃのう。ここをこうして、ふむふむ・・・・・・これをこうすることは可能かの?」
「なるほど! それは可能だ。早速やってみよう」
ジョグの提案にマサムネが食い付く。
行き詰っていたところを上手く進めることができるかも知れない。
ただ、しばらくは時間がかかりそうなので、アトスはオトとショウの様子を見に行くことにする。
──
オトとショウは、騎士団と激しい戦闘を繰り広げている。
身体能力の違いがあるため、どうしてもオトとショウの二人が抜きんでているようだが、それでもジャンヌの剣はやはり侮れない。
ジャンヌの剣戟は鋭く、目にも止まらぬ一閃を受けると大きく吹き飛ばされ、躱してもとてつもない風圧に飛ばされてしまう。
まともに喰らったらオト、ショウでもかなり危険だ。
「ジャンヌは魔剣士じゃないのか?」
アトスはなんとなくだが、ジャンヌから魔剣士のような雰囲気を感じ取っていた。
「あぁ、そうだ。だが・・・・・・この剣に魔法を纏わせるのは危険すぎる」
「ほう?」
「この修練場はかなりの強度があるが、それでも修練場が持たない。それに、オト殿、ショウ殿の身の安全を保障できなくなる」
そういう事か、とアトスは納得した。
修練場には回復専門の魔法使いが数名待機しており、たとえ大きな傷を受けたとしても命を落とす心配はまずない。
だが、一撃で命を失ってしまってはどうしようもないのだ。
ならば、とアトスが提案する。
「オトとショウの身の安全は俺が保障する。それから修練場の内側に結界を張って、修練場にも影響を与えないようにしよう。だから、全力でやってみろ」
「アレよりさらに強い攻撃があるらしいね」
「そのようだ。気を抜くなよ」
オトとショウの警戒度が最大になる。
二人とも、どこか緊張しているような面持ちだ。
「では遠慮なく」
ジャンヌは名刀城和泉守正宗に炎の魔力を纏わせる。
「魔炎神滅閃!!」
「おいおい・・・・・・」
二人どころかこの場にいる全員がヤバいじゃねーか、とアトスは瞬時に場の全員に結界を張る。
オトとショウについては、ヤバそうなら命を落とすよりも早く回復するだけだった。
その身を以って、ジャンヌの剣戟の凄まじさを体験してもらいたかったのだ。
二人の進化の糧とするために。
・・・・・・
・・・
「今のは危なかったね」
「アトスが居なければどうなっていたことか」
やはり、二人は命を落としかけていたようだ。
「でも、これでボク達はこの攻撃に対抗できるようになるかもね」
「そうだな。一気に成長できた気がする」
アトスの思惑通り、強い者と戦うほどに聖獣は成長し、進化するようだ。
「それにしても、ジャンヌの一撃はとんでもない威力だったな」
「そういうアトス殿の結界は前より強固になっているのでは?」
「あぁ。改良した」
「ふっ、そんなあっさりと強くなられては、お手上げだ」
ジャンヌははっきり、アトスに勝てないと言う。
この潔さ、さすがは騎士団と言ったところか。
「結界と身の安全を保障する魔法はかけっぱなしにしておくから、お互い全力で特訓してくれ」
騎士団の面々は驚愕するとともに、覚悟を決めた表情になる。
これで、特訓の成果はグッと高くなるだろう。
「俺はマサムネの所に戻る」
「うん、またあとでね」
オトとショウの成長は著しく、進化にさほど時間を要しないだろう。
二人のことは心配ない。
それよりも。
アトスが気になっているのは魔法具だ。
難航するのは想定していたし、試行錯誤することが楽しいのだ。
やはり自分もそこに加わりたい気持ちが膨れ上がってきていた。
「アトス、できたぞ!」
転移門をくぐり抜ける前に、マサムネが興奮した様子で話しかけてくる。
どうやら『始まりのブロック』の試作品が完成したようだ。
誰でも簡単にプログラム魔法を作れるようにするキット。
アトスが思い描く魔法具を作るための魔法具が、ようやく形を成し始めたのだ。
次話は明日アップ予定。
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