第23話 邂逅3
一部誤字を修正
双方の合意のもと、王国騎士団がマサムネに依頼していた仕事は完了となった。
これで、マサムネも魔法具の開発に専念できる。
「アトス殿」
ジャンヌが立ち去ろうとしたアトスを呼び止める。
「先ほどは大変失礼をしました」
「気にしていない。それに、そのことはもう終わったはずだ」
「ありがたく。それで、一つお願いがあるのですが」
「お願い? なんだ?」
「我々騎士団の特訓相手になっていただけないでしょうか」
それはちょっと面倒だな、とアトスは思った。
正直なところ、マサムネ、サダムネと魔法具の開発に専念したいのだ。
そのためにここまで相談にやってきたにも関わらず、別の要件が増えてしまっては元も子もない。
しかし、あまり無碍にするのもどうかと思案する。
・・・・・・
・・・
「ダメでしょうか」
ジャンヌは残念そうな表情を浮かべる。
「俺は忙しくてな」
「そう・・・ですか」
「その代わり、俺の仲間に声をかけてみよう」
そう言って、アトスはオトとショウに相談する。
二人とも、二つ返事OKだった。
転移門を開き、二人を呼び寄せる。
毎度のことだが、騎士団の面々は大きく驚いている。
「ジャンヌ、こっちがオトでこっちがショウだ。二人ともかなり強いからいい特訓相手になるはずだ」
「オト殿、ショウ殿、私は王国第1騎士団長を務めるジャンヌです。今回の件、お引き受けくださりありがとうございます」
「ボクも楽しみだよ。よろしくね!」
「俺の修行にもなる。こちらこそよろしく頼む」
「オト、ショウ。ジャンヌの剣は凄いぞ。油断せず全力で楽しんでこい」
これで一件落着だな、とアトスは思った。
素材は自分で集めるしかないが、それもAIに任せておけば問題ない。
これでようやく魔法具の開発に専念できる。
喜びと期待を胸に、アトス達はマサムネの工房へ移動する。
アトスは早速、新しい魔法具の案を二人に伝える。
それは汎用プログラミングキットとでも呼べそうな代物だった。
当然マサムネもサダムネも理解が追い付かない。
一歩ずつ進めよう、とアトスは考える。
アトスは思い描いている魔法具の始まりの部分は何だろうか。
汎用プログラミングキットは、次のような仕組みを考えている。
──
魔法はそれぞれ一つの『ブロック』である。
ブロックは『一の字型』である。
但し、幾つかの種類のブロックには別の処理を埋め込むことが可能。
それらのブロックには『編集モード』と呼ばれる『コの字型』のモードがある。
『コ』の中に魔法ブロックを埋め込むことができる。
プログラミングキットの始まりは『始まりのブロック』と呼ばれる特別なブロックである。
始まりのブロックには必ず『常設型トリガー魔法』のブロックをセットする。
そして、トリガーによって起動する魔法のブロックを埋め込むのが基本的な形だ。
魔法の流れは以下のようになる。
1.常設型トリガー魔法が発動
2.何らかのものを検知(または探知)
3.2.をトリガーにして埋め込んだ魔法を発動
これを『魔物を探知すると火球を放つ』という魔法の例で表す。
1.常時探索魔法が発動
2.魔物を探知
3.2.をトリガーにして探知した魔物に火球を放つ
一番シンプルな流れがこれだ。
──
「まずは一番基本的な形を作ろう」
アトスは二人に説明する。
一番イメージしやすいのは、常設型探索魔法。
『何かを探知した』ことが、次の魔法のトリガーとなる。
ここをまず創り出したい。
まずは、マサムネが『始まりのブロック』を試作し、サダムネが『魔法ブロック』を試作する。
一つの魔法ブロックに常時探索魔法を仕込み、始まりのブロックにセットする。
もう一つの魔法ブロックに刻印→水弾のプログラム魔法を仕込み、始まりのブロックに埋め込む。
これを起動して、探知した魔物に水弾が飛べば成功だ。
と言っても、実際に魔物を相手に試すのは効率が悪すぎるため、常時探索魔法をモック化しておく。
『モック』というのは、常に決まった結果を返すものだ。
つまり、標的とする岩を用意しておき、常にその岩を魔物として探知したことにする。
その岩に水弾が飛んでいけば成功、というわけだ。
試作品の作成はかなり難航している。
特にマサムネが担当している『始まりのブロック』が相当難しいようだ。
編集モードの仕組みが難度を上げているようなので、まずは可変ではなく常にコの字型で試作してもらうことにする。
作っては魔法をセットして試す、というのを何度も繰り返す。
二人の作業スピードはとても速く、みるみる内に魔法素材が減っていく。
オトとショウは騎士団との特訓中なので、アトスのAIだけが素材を集めている状態だ。
もっと魔物が多い場所でないと、素材の供給が不足してしまう。
・・・・・・
・・・
アトスの作業は、試作品にモック探索魔法と水弾をセットするだけだった。
そこで、セットするところまでを組み込んだプログラム魔法を開発し、魔法石にセットしてみる。
それを二人に渡して試作品に魔法をセットしてみてもらう。
試作品を鑑定すると、魔法がセットされていることが確認できた。
これで、魔法石を用意しておけばアトスはここに居なくて大丈夫だ。
『近くの迷宮から人が逃げるように出てきています』
付近を探索しているAIからの報告があった。
アトスは二人に魔法石を渡し、迷宮に向かう。
──
「ここも異変が起きてやがる!」
「さすがに魔物が多すぎる」
「それに、いつもより強い魔物ばかりだ」
逃げ出してきた冒険者たちが口々に言う。
それを横目に、アトスは迷宮に向かう。
「お、おい、アンタ。今その迷宮はかなりヤバいぞ」
「あぁ、大丈夫だ。情報ありがとう」
冒険者が心配して声をかけてきた。
アトスは礼を言って、迷宮に入る。
迷宮の中には、魔物が溢れかえっていた。
それも、B~Aランクの魔物ばかり。
数が少なければ、いい腕試しになるのかも知れないが、この数はさすがに並の冒険者では太刀打ちできないだろう。
AIが魔物を殲滅し、アトスは迷宮をサクサク進んでいく。
「なぁ、素材を収納空間にしまうだろ? これをマサムネの工房にそのまま送ることはできないか?」
『やってみます・・・・・・できました』
「あっさり出来たな。これで一々戻らなくていい」
収納空間の応用で転移門ができたのだ。
それを考えれば異なる場所に物を送ることなど造作もないことだった。
「おいおい、これはさすがに異常すぎるだろ」
そうアトスが零したのも無理はない。
十階層までたどり着いたアトスの前に居たのは、Sランクモンスターの群れだった。
以前どこかの迷宮で見たような広大な景色。
その中に、バジリスク、ウォーウルフ、アメミット、マンティコア、オーガ・・・・・・ドラゴンゾンビまでいる。
さすがにこれは熟練の冒険者でもひとたまりもないだろう。
そもそもSランクの魔物でも倒せるものは数少ないと言う。
それが、群れを成しているのだ。
さらには召喚を行う魔物すらいる。C~Aランクの魔物はいくら倒してもキリが無い。
そんな光景が眼前に広がっている。
「魔物同士で争うことはないのか?」
アトスは素朴な疑問を抱いたが、残念ながらこの場にいる魔物はすべて、アトスを狙っている。
と言ったものの、AIが恐るべき速さで魔物を殲滅している。
次から次へとSランクモンスターが出現する様は圧巻だが、それでもアトスの驚異的な魔力とAIの性能の良さが遥かに上回っている。
「AI、近くにこの異常を作り出している者がいるかも知れない。半径1kmの球形探索してくれ」
『500m前方上空に人間の反応があります。さらに、左右前方各300m先に強力な魔物の存在を確認』
湧いてくる魔物を殲滅しながら、アトスは前方へ歩く。
『左右前方から魔物が近づいてきます』
「倒す前に鑑定を頼む」
種 族: 窮奇眷属
ランク: S3
種 族: 渾沌眷属
ランク: S3
「窮奇の眷属、この前オトが倒した魔物だな。何体もいるのか。それと、もう一体も眷属なのか」
禍々しくうねった角、巨大な鋭い牙、それらが人間のような顔から生えている。
悍ましいオーラを漂わせる、牛のような身体の魔物。
オトとショウは合わせない方が良さそうだ、とアトスは考える。
それに、窮奇の眷属はこの前みた。
なんら苦労することはないだろう。
と考えているうちに、AIがあっさりと倒していた。
「きっ、貴様、何者だ!」
黒い法衣を纏った男が近づいてくる。
「魔法使いだ」
「ただの魔法使いにアレが倒せるものか!」
「そう言われてもな。倒したのは事実だ」
「クッ・・・・・・教団に報告せねば」
男は逃げ出そうとしたが、AIがあっさりと結界に捉えた。
「教団ってのはアヌグラ・マニュー団のことか」
「なっ、我らのことを知っているのか」
「あぁ。この前も一人捉えたんだが・・・・・・」
「馬鹿な・・・・・・俺から情報を聞き出そうとしても無駄だ。グハッ」
またもやアヌグラ・マニュー団の男は自害した。
こうも簡単に自らの命を絶つ。その姿をみると、アヌグラ・マニュー団が恐るべきカルト教団のように思えてくる。
「素材も随分と集まっただろう。一旦、マサムネの工房に戻るか」
アトスが転移門を開こうとしたその時
「おぬし、何者じゃ?」
初老の男性が話しかけてきた。
「俺はアトス。魔法使いだ。アンタは?」
「ふむ・・・・・・おぬし、聖人か。まさか聖人に会える日が来るとは」
「聖人? 何を言ってるんだ?」
「儂は霊亀。聖獣霊亀じゃ」
突然現れた初老の男は、自らを聖獣だと言う。
聖獣・・・・・・オト、ショウと同じなのか?
それと、アトスが聖人だというのは一体どういうことなのか。
「どういうことか、話してくれ」
アトスはこの男から詳しく話を聞くことにした。
次話は明日アップ予定。
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