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第14話 転移門

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 そう言えば、とアトスは冒険者ギルドへ向かう。

 これまで倒した魔物のうち、ギルドへ報告していないものと依頼ボードを突き合わせる。

「これを頼む」

 受付嬢エリーのもとへ依頼票をもって行き、受注手続きを行う。

 そのまま、その場で依頼の達成報告を行う。

「Bランクにランクアップです!」

 二度と破られないであろう、最短のランクアップだ。

 さらに、Bランクになってようやく受注できる依頼がいくつかあった。

 その中には、ジャバウォックの討伐もあった。

「迷宮の異変報告で新たに発注された依頼ですっ!」

 なるほど。その時々の状況によって依頼が増えたりするのか。

 ま、当然か、とアトスは納得する。


 (アトス、ちょっとやばそうなのがいるよー)

 オトから緊急の連絡がきた。

 緊迫感は全く感じられないが。


 (どれどれ。鑑定結果は・・・・・・)


 種 族: マンティコア

 生命力: 50,000 / 50,000

 スキル: 火炎ブレス、毒


 (毒を使うようだな。生命力もかなり高い)

 (戦ってもいい? )

 (ショウと二人なら何とかなるだろう)

 そう言って、身体強化と持続回復を二人にかける。


「なぁ、街の北東、少し遠い場所にある迷宮は知っているか?」

 ギルドに居た紅のメンバー達に聞く。

「あそこは少し強い魔物がいるところだ。階層はこの前の迷宮と同じく5階層で終わりだったはずだ」

 この前の迷宮は10階層まであったぞ? と思うアトスだったが、すぐにそれが異変の影響であるのだろうと考え直した。

「異変は起きていないのか?」

「報告は受けていないが、この街の周囲の魔物が活発になっていることを考えると、同じような異変が起きているかも知れない」

 元々、この前の迷宮より強い魔物が出て、異変も起きているとなると・・・・・・アトスはオトとショウの事が少し心配になってきた。


 アトスはふと、魔物の鑑定結果にランクも出せないのか? と思いながら、再鑑定を試みる。


 種 族: マンティコア

 ランク: S

 生命力: 50,000 / 50,000

 スキル: 火炎ブレス、毒


 やはりSランクか。

 (オト、ショウ。そいつはこの前のアメミットと同等の強さを持っているかも知れん。気を抜くな)

 (はーい)

 (承知した)

 二人には余裕が感じられるが、何か嫌な予感がするアトスは、保険をかけておくことにする。


 それとは別に、アトスは気になっていることがあった。

「クレイド。鍛冶師って知ってるか?」

 武器や防具を作る職人がどこかに居るはずだが、まだ見聞きしたことが無かった。

「ちょっと変わった鍛冶師が確か、そうそう。さっき言ってた北東の迷宮から少し外れた所に住んでるぜ」

「なぜそんなところに?」

「迷宮が近い方が素材を集めやすいからって言ってたな。ちょっと変人だが腕は確かだ」

「ありがとう」

 オトとショウも気になる。一石二鳥というわけではないが、とにかく迷宮まで足を延ばそうと考えたアトス。

 だが、かなり距離があることに気づいて呆然とする。


 素材なら、向こうで手に入れたものを収納空間に格納してこちらで取り出したりできるのにな。

 そう考えて、自分が物だったら簡単に移動できるのに・・・・・・と考えてハッ! と気づくアトス。

 もしかして、これできるんじゃないか?


 アトスはまず、オトの居る場所を特定する。

 と言っても、今自分の居る場所からの相対的な位置である。

 どの方向に、どのぐらいの距離か、というのを正確に。

 普通に考えればそんなことはできそうに無いのだが、プログラマーという人種しょくぎょうは『普通』を嫌うのだ。

 なぜできないのか。どうすればできるのか。それを探求する能力は非常に高い。

 そして、今アトスが行っているのは探索魔法と思念通話の応用である。

 つまり、オトやショウの居る場所に限定して、その相対座標を特定可能となる・・・・・・かも知れない。


『思念通話は魔法のようなもの』だとオトは言っていた。

 つまり、指向性と速度を持っているのではないか? とアトスは考える。

 それがどういう事かというと、思念がどの方向からどんな速さで飛んできたかを観測できるということ。

 まず、発信すると同時に半径500mの面積型探索魔法を発動。円周上と中心で探知した時間の差から速度を算出。

 また、発信源(つまりオトやショウ)から発信時の時刻を送り、到着時点の時刻との差を取る。

 これで、速度と時間が分かる。

 あとは、小学校で習った「みはじ」の公式を使えば距離が分かるって寸法だ。

 ──そう言えば、俺が習った先生は独特だったな。ちょっと下品だが『パンツが()えたらはじ(・・)や』と教わった。おかげで今でも最初にこれが出てくる。

 そんなことを考えて、アトスは苦笑する。


 オトが返事を発信するのをトリガーに発動する【思念距離算出】魔法を発動しておく。

 これは、以下の魔法を発動するプログラム魔法だ。

  発信時刻通知

  面積型思念探索(思念のみを探知させる、省エネ魔法)

  円周上での思念探知をトリガーに到着時刻1を取得

  中心での思念探知をトリガーに到着時刻2を取得

  最後に、それらの情報から『みはじ』の公式で距離を算出


 アトスは気づいていないが、2箇所で同時に発動する魔法を一つのプログラム魔法に組み込むというとんでもないことをやってのけている。

 だが、それすらもアトスにとっては『当たり前』に過ぎないのだ。


 (オト、今少しだけ動かないでくれ)

 (? はーい)

 この返事を持って、アトスとオトとの距離・方向が分かった。

 あとはそこへ、自分を移動させるだけだ。

 ・・・・・・

 ・・・

 何も起こらない。


「あれ・・・・・・」

 イメージ通りに魔法が発動しなくて困惑するアトス。

 自分を移動させるイメージはダメなのだろうか?

「そうか」

 何かに気づくアトス。

 ・・・・・・

 ・・・

 ブォン!

 突然、アトスの眼の前に『輪』が出現した。

 その先には、オトとショウが見える。

「よし、できた」

 そう言って、輪をくぐるアトス。

「な、なにをしたのだ?」

「アトス、すごいねー」

 二人が驚くのも当然だ。

 突然、輪が現れ、そこからアトスが出てきたのだ。

「収納空間あるだろ? あれの応用で、ちょっと繋げてみた」

「「ちょっと、繋げてみた・・・・・・?」」

「あぁ。俺が居た場所とここをな」

「「・・・・・・」」

 言葉も出ない。

 見たことも聞いたこともない。


「いやー、自分を移動させようと思ったんだが、量子化してテレポートするのが上手くイメージできなかったみたいでな。収納空間を開くイメージを応用してみたらできたんだ」

「な、なにを言ってるのかよく分からないんだが」

「それもぷろぐらむまほー?」

「いや、これはプログラムではなくてただの魔法だな」


「ところで」

 何やら言いたげな二人を横目に、アトスは話題を変える。

「マンティコア、だったか。アレはどうなった?」

「アレならもうやっつけたよ♪」

「手強い魔物だったが、身体強化のおかげでなんとかな」

「そ、そうか。なら良かった」


「で、アトスは何しに来たの?」

「二人の様子をみるついでに、この近くに居るらしい鍛冶師を探しに来たんだ」

「かじし?」

「武器や防具を作る人のことだ」

「なるほど。では俺達も探そう」

「あぁ、頼む」


 アトス達は三手に分かれて鍛冶師を探す。

「建物やダンジョンになっていない小さな洞窟なんかがあったら教えてくれ」

「はーい」

「承知した」


 探しながら、アトスは構想を練っている。

 あたかももう鍛冶師と知り合ったかのような気分で、どんな物を作ってもらおうか考えているのだ。

 (アトス~、いま変な顔してるでしょ)

 (な、なんでバレたんだ)

 焦ってキョロキョロするアトス。

 (アトスはいつもそんな感じー)

 (し、失礼なっ! )

 どうやらオトはもう、アトスの思考パターンが読めてきたようだ。


 (アトス、小屋があるぞ)

 ショウが小屋を見つけたようだ。

 (分かった。すぐ行く)

 (アトスー、オトも連れてってねー)

 転移門を開き、ショウの居る場所に移動したアトスは、続いてオトの居る場所と転移門を繋げる。

「オト、こっちだ」

「わーい。これ通ってみたかったんだー」

 ・・・・・・

 ・・・

「なんともないねー」

「あぁ、そうだな」

 オトは拍子抜けしているようだ。

 むしろ、何かあったらどうするつもりだったのか聞いてみたいところだが、グッと堪えるアトスだった。


次話は明日アップ予定。


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