表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/54

第11話 迷宮2


「ねぇ、アトス。提案があるんだけど」

「なんだ? 言ってみろ」

「えーあいが魔物を倒すでしょ? あれ、ボク達が通らないところだけにできない?」

 どうやら、自分の出番を確保したいだけのようだ。

「・・・・・・全く。ま、それもアリだな」

「わーい!」


 こうして二人は、魔物を戦うことを楽しみながら一直線に迷宮に向かう。


 ──


「ん?」

 迷宮ダンジョンの入り口に誰かいるようだ。


『我々の・・・は正常に・・・いるようだ』

『あぁ。近くに・・・も居ない。狙・・・り、魔物に食べ・・・ようだ』

 何やら会話している。

『っ!!』

 黒い法衣のようなものを着た二人組は、アトス達に気づくと去って行った。


「オト、今は魔法石を増やしたいんだ。だから、使わずに行くぞ」

「やったー♪いっぱい戦えるってことだね!」

「あぁ、そうだ」


 二人は、あっという間に4階層にたどり着いた。


「グオォォォ!!!」

「マジか」


 倒したはずのジャバウォックが、眼前に降り立つ。

 ゴブリン等の魔物もどんどん復活するのだ。ジャバウォックが復活しても不思議ではない。

 だが、中ボス級の魔物は復活しないものだと思い込んでいたアトスは驚きを隠せなかった。


「ねぇ、ボクがやっていい?」

 アトスと違って、オトはわくわくしているようだ。

「多分だが、あいつに炎は通じないぞ?」

「うん、ま、なんとかやってみる」

「わかった。あいつが召喚する雑魚は俺に任せろ」

「うん」


 やれやれ、困った奴だな、と思いながらもアトスは打算する。

 召喚された魔物を倒し続ければ、ポイントを稼げるな、と。

 それに、ジャバウォックの魔物召喚は恐らく魔力を消耗する。ということは、召喚させればさせるほど、ポイントを稼ぐのと同時にオトの支援サポートにもなるのだ。


「ま、焦らずゆっくり戦えやればいい」

「ありがと~♪」


「グオォォォ!!!」

 狙い通り、ジャバウォックは魔物を召喚する。

 だが、召喚した途端にAIが殲滅せんめつする。


「グオォォォ!!!」

 再び魔物を召喚するジャバウォック。

 だが、再びAIが殲滅すると、怒り狂ったように叫ぶ。


「グオォォォッッッ!!!」

 それと同時に三つの首から黒炎が放たれる。

「ほい、っと」

 それをあっさりかき消すオト。


「グオォォォッッッ!!!」

 怒り狂ったジャバウォックは、黒炎を連発する。

 しかし、事も無げにオトはそれをかき消す。

 それを見て、ジャバウォックはさらに怒り狂う・・・・・・かに思えたが、無言でゆっくりと二人の様子を見る。

 一瞬の静寂の後・・・・・・

 ジャバウォックの姿が視界から消える。


「ほい、っと」

 目にも止まらぬ高速突進を、オトはいとも簡単にかわす。

 (強化版全身強化をかけておいて正解だったな)

 前回の教訓から、アトスは効果を強めた全身強化をかけておいたのだ。

 もちろん、持続回復も合わせてかけている。


 動揺した様子のジャバウォックは、魔物の召喚を繰り返す。

 何度繰り返しても、召喚された途端にAIが殲滅する。

 観念したのか、ジャバウォックは再び沈黙する。

 そして・・・・・・

 三つ首の前に、一つの炎の塊が出現した瞬間。

 黒い炎がビーム状に放たれる。


「ほい、っと」

 オトは炎をかき消すが・・・・・・

「わわわっ!?」

 かき消した先からビームが伸びてくる。

「よっ、ほっ、わわっ!」

 炎をかき消したり、避けたり、オトはなんだか楽しそうに空を舞う。

 だが、避けるだけでは倒せない。


「手伝おうか?」

 アトスが声をかける。

「ん-、ちょっと待ってて」

「分かった」


 オトは大きく口を開く。

 すると、オトの口から青白い炎がビーム状に放たれる。

 ドンッ!

 ジャバウォックは、黒い炎でオトの炎を受け止める・・・・・・が。


「グ、グオ、ォォォ・・・」

 オトの青白い炎は、黒い炎ごとジャバウォックを飲み込んだ。


「今のはもしかして、聖なる炎か?」

「うん、そうだよー」

「すごいな、オト」

「えへへ~」

 オトは、嬉しそうに照れている。


「さて、先に進んでみるか」

「楽しみ~」

 二人は5階層へと足を踏み入れる。


 ──


 5階層になると、迷宮の様相が一変する。

 これまでは茶色がかっていた壁や床が、白の中に薄く青みがかっている。

 空間は淡く輝いており、神殿のような神々しい雰囲気を感じさせる。


 棲息する魔物もこれまでとは異なっている。


  ゴブリンナイト:剣と鎧を纏い、身体能力が大幅に強化されたゴブリン

   オークメイジ:魔法が使えるオーク。身体能力も大幅に強化されている

  コボルトキング:身体が大きくなり、強化されたコボルト

  ベビードラゴン:炎のブレスを吐くトカゲ


 等々、4階層までとは違い、C~Bランクの魔物が出現する。

 だが、ジャバウォックを難なく倒せる二人にとって、全く恐るるに足らなかった。


 初見の魔物に出会ったときには期待・・する二人(特にオト)だったが、大した脅威を感じることはなく、がっかりしているほどだ。。

 とはいえ、大量の魔物を討伐し続けた二人の魔力は、かなり少なくなっていた。


 『マリョクザンリョウテイカ。ヒキモドスコトヲオススメシマス』

 AIが進言する。

「そうだな。戻る時にも魔物は出てくるはずだし、魔力が尽きる前に戻ろう」

「ランク上がるかな~」

「どうかな」


 帰りはAIに任せっきりで、さっさと街まで戻った二人。

 早速ギルドに向かう。

 (依頼になかった魔物の討伐は報告せずにとっておこう)


「全部で13,000ポイント、Cランクへランクアップです!」

 ギルド内にどよめきが起こる。


「全くお前たちときたら。ギルド登録したその日にCランク到達なんてあり得ないぞ」

 テーブル席にいたクレイドが呆れたように称賛する。

「まだ昼過ぎじゃない。どこで何したらそんなことになるのよ!」

 ナタリーが怒ったように言う。

「心配してたくせに」

 イリスがボソッと言う。

「なんか言った?」

「い、いや、何も・・・・・・」


 周囲のざわめきを気にも留めず、アトスは依頼ボードの前に向かい、Bランクの依頼を確認する。


 ・B:ゴブリンナイト×5の討伐(60pt)

 ・B:コボルトキング×5の討伐(60pt)

 ・B:オークメイジ×5の討伐(80pt)

 ・B:ベビードラゴンの討伐(100pt)


「なぁ。この依頼なんだが、すでに倒していても依頼達成になるのか?」

「はい。受注手続きの後に報告していただければ大丈夫です」

「そうか。なら早速Bランクの討伐依頼を全て受注する」

「はい。手続き完了しました」

「じゃ、これを」

 そう言って、Bランクの魔物の素材を渡す。

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

「全部で28,060ポイントです」

「Bランクまではあと何ポイントか分かるか?」

「少々お待ちください・・・・・・あと57、865ポイントです」


「オト、魔力が回復したら魔法石集めがてら、ランクアップを目指そうと思うんだが、いいか?」

「うん。一緒にいく~」


「先ほどの分と合わせて、依頼達成報酬をお渡ししますね」

 銀貨、銅貨はもちろんのこと、金貨の袋も溢れんばかりだ。

「こんなに貰って大丈夫なのか?」

「大丈夫です。その分の素材を納品していただいてますので」

「なら、遠慮なく」


 ──


 しばらくの休息の後、アトスはステータスを確認する。


 アトス:

  魔力: 65,535 / 65,535


  オト:

  魔力: 12,000 / 10,000(+2,000)


「よし、全快したな」

 魔力が回復したのを確認し、二人は迷宮へ向かう。

 魔物はAIに完全に任せ、あっという間に二人は10階層に向かう階段までたどり着いた。

 ここまでの稼ぎを確認する。


 ポイント: 37,425(pt)

昇進まで: 10,440(pt)

   素材: 魔法石(小)×521

       魔法石(中)×37

       魔法素材(皮)×3

       魔法素材(爪)×1


「順調だな」

「だね~。でもちょっとつまんないかな~」

「そうだな」

 オトは少し強い魔物と戦いたいようだ。

 実のところ、アトスも魔法の使い方を考えたり新しいプログラム魔法を開発するのが楽しみなので、ある程度の難敵を待ち望んでいたりする。

 だがそれよりも、今はランクアップと魔法石の収集を優先しようと考えているのだ。


 魔力も半分以上残っている。

 このまま進んで問題ないとアトスは判断する。

「次の階層へ行こう」

「面白い魔物がいるといいな~」


 そう言いながら、二人は10階層につながる階段を足早に駆け上っていく。


第12話は明日アップ予定


ブックマーク、評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ