第3章 3, 謎の婚約
「アレンの様子が…」
「ルアのお友達が俺を見つめてどうしたんだろうね。」
「……」
私はひきつった顔でジアン様を見た。
ぜったいこいつの仕業じゃん。っていうのは心にしまっておこう。
「なにか?」
「なんでもありません。」
「へぇ。」
…この皇太子二重人格者だな。私は悟った。
「そろそろ手離してくれません?」
「……」
無言でジアン様は手を離した。
こっちを見ていたアレンもおとなしく椅子に座っていた。
「ルア、おはよう!」
私はこの春風のように響く心地よい声を聞いた瞬間、ぐるんと振り返った。
「レミおはよう!!!!」
「ふふっ、今日も元気そうでなによりね。」
「すっごく元気!!」
さっきの重っ苦しい雰囲気も、レミのおかげで今は天国にいるかのように明るい。
1人で笑っている私をよそに、レミはジアン様に声をかけた。
「皇太子殿下、少しルアをお借りしてよろしいでしょうか?」
「あぁ、そんなに堅苦しくしなくていい。」
「恐れ入ります、ジアン殿下。」
え、何事?レミ私に話あるのかな?
いやそもそも私ジアン様のものじゃないんだけど借りるってなに??
「ルア、カフェテリアで少し話しましょう。」
「う、うん」
私は手を引かれるがままに連れて行かれた。
「レミ、話ってなに?」
私はカフェテリアの椅子に座るなり質問した。
「…恋バナよ!」
「…おおおお!!恋バナ!レミ恋バナあるの!?!?」
「実はね…」
もしかしてもしかしなくてもエドのこと!?!?
「私婚約することになったの、確定はしていないんだけどね。」
「え…エドは…?」
予想外の言葉に私は目を丸くした。
「あなたの弟のことは置いといて…」
「うんうん…」
「相手のことなんだけれど…」
私はごくりと唾を飲む。
「イクロス様なの。…どうして急に彼との婚約の話が出たのか謎で…」
「え」
レミは私の機嫌を伺うかのような目でこちらを見ている。
なんで急にアレンと…?それにエドは…
私の頭の中はごちゃごちゃだ。それになんでレミが申し訳なさそうにしているのかにも理解が追いつかない。
「その…ルアはイクロス様のこと慕っているのでしょう…?」
「え!?…そういうのじゃ…」
情報量が多すぎて頭がパンクしそうだ。
「レミはそれでいいの?好きな人とか…」
レミは唇をぐっと噛み締め、俯いた。
「…私は正直この婚約をしたくありません。その…さっきルアが言ったとおり、オルクエド様のことが気になっていて。」
私はその言葉を聞いてほっとした。…ほっとした?
……まあいい。
原作通りやっぱり2人は恋に落ちてるのかな?よかった!私の義妹だ!!
「エドのこと気になってるなんて、嬉しい!」
「この前階段で転びそうになったところを助けていただいて…その時にかっこいいと思ったのよ。」
「そんなことが!?レミが無事でよかった…!エドもやるなぁ…!」
私の弟優秀!後で褒めてあげなくちゃ!
「…ただし問題があるんです。」
「問題…?」
「私と婚約が決まろうとしているのはラーム国の皇子。その婚約をどうするかが問題なの…。」
すっかりそのこと忘れてた。うーん……あ!!!
「レミ、私に任せて!」
私はレミの手を握りにぃっと笑った。