第3章 1 , 研修旅行①
「来週から研修旅行が始まります。先日のテストで赤点をとった生徒はそれまでに課題を終わらせるように。」
そう、新学期が始まったのもつかの間、この学園では毎年恒例の研修旅行が始まろうとしていた。1年生は私たちの住む国、オーズクレイ帝国内で。2年生は隣の国、ラーム国にて。3年ははるか遠くの国、レインズワルド国での魔法研修だ。
私はギリッギリ赤点回避。やったね。
「ラーム国……?ラームってどこかできいたような……」
「俺の事呼んだ?」
「あ、アレン?呼んでないけど……、ラーム国の『ラーム』って聞いたことない?」
アレンはポカンとしていた。
「いやだから、俺でしょ?」
「え……アレンはイクロスじゃん。」
「うん、イクロス・ラームな?」
「へ〜…………へ!?!?」
アレンってラームなんだ……!なんか聞いたことあると思った!!
「アレンこの国の人なのにラームって言うんだ……」
「そうじゃなくて、」
「そいつはラーム国の第3皇子。」
急にジアン様が話に入ってきた。
「え、何言ってるんですか?」
「ルアがアレンって呼んでいるそいつはラーム国の第3皇子、イクロス・ラームってこと。」
「は」
頭が追いつかない。なに?第3皇子?え?
「ルアに俺言ってたけど...」
「忘れてたみたい〜……」
私今まで無礼なことたくさんしてなかった?今日が命日になっちゃう...!一国の皇子を馬と同等扱いしていたなんて……!!
「イクロスは留学生なんだ。」
ジアン様が私の耳元で囁いてきた。
私たちが住んでいるオーズクレイ帝国は全大陸の中でも一二を争うほど栄えている国だから皇位継承権を持つ者ということで留学してきたのだろう。
……
もうこの際吹っ切るか!
「...へー!じゃあアレンと同じ班になった人は研修旅行すっごく楽しめそー!」
「ルアは一緒になるよな?」
「え」
「俺ら去年も一緒だったしそのほうが」
「いいの!?!?」
私はキラキラと目を輝かせて身を乗り出した。
「お、おう。」
アレンは驚いたように目を見開いたあと、嬉しそうに笑った。
「確か班って4人だよね?レミも誘っていいかな?」
「ん、じゃあ俺からも誰か誘っとくわ。」
そんな話をしたあと、私はレミの元に駆け寄って行った。
「レミ!今大丈夫?」
「大丈夫よ、なんだか嬉しそうね。どうしたの?」
「研修旅行なんだけど同じ班にならない...?」
「ええ、喜んで!ちょうど私もルアを誘おうと思っていたのよ。」
美しい。今度画家でも雇って絵にしてもらおうかな...
私はそんな考えをかき消す為に、ごほんと咳払いをした。
「ついでに今の所アレンも一緒だよ!」
「アレン……、どなたでしょうか...?」
つい癖で...!!
「アレンっていうのはイクロスのあだ名なの」
「ああ、そうなのね、なんだかしっくりくるわね。けれどイクロスさんがいるならばラーム国の観光も楽しめそうね!」
レミはふふっと笑いながらそう言った。
はいかわいい。
✧︎*。
「イクロス、話がある_____」
もう一方では...?