第2章 8, イクロスorアレン
「うーん…なんかルア変わった?あ!髪のリボン変えたんだな!」
「そうかもね〜…」
イクロス・ラームって誰!?!?小説にはこんなキャラいなかったし…モブ?その割には整った顔してるけど…。
「なんだよ、今日のルア変だぞ?」
「はは、勉強しすぎちゃったからかなー!」
「……」
「……」
イクロス?はまだしも、隣にいるジアン様も引いてるじゃん。どうしよう。
私は目を泳がせながら心で助けを求めた。
誰か、誰かー!!!!
「ルアー、弟さんが来てるわよ?」
この声はレミ!!エドが来たって!?!?ほんっとにベストタイミング!
「わかったー!今すぐ行く!」
そして私はそそくさとその場を後にした。
「…まじでどうしたんだこいつ?」
「エドどうしたの?」
私はエドのところに行くなり満面の笑みで尋ねた。
「それが…今日の朝姉さんと登校しようと思って女子寮の前で待ってたんだけど、通りすがりの子に聞いたら姉さんはもう行ったって言われたからどうしたのかと思って…」
困り眉をして私を心配してくれているエドの姿に私はひどく心を打たれた。
こんな可愛い弟に心配されて私は幸せ者だな…
「テストの勉強をしようと思って早く来たの。先に行っちゃってごめんね!」
「!いや、僕こそ勉強の邪魔を」
「そんなことないよ!ベストタイミングだったし!勉強できてないし…」
「…?」
エドは私の席の方にいる2人に目をやった後、あぁ!と嬉しそうな顔をした。
「姉さん、イクロスさんと一緒にいたんだね!」
「エ、エド彼の事知ってるの!?」
私は小さな声でそう聞いた。
「うん!姉さんがよくイクロスさんの話をしてくれてね、家に来たこともあるんだよ?」
「えぇ!?そ、それは私が彼を好きだったってこと…?」
「あ、そういうのじゃなくて、姉さんはイクロスさんとすごく仲のいい友達ってこと!あだ名で呼ぶくらい!」
「あああああだ名!?」
「うん、アレンって呼んでたよ?」
「アレンって誰…?」
「姉さんが飼ってる人懐っこい馬の名前だよ。」
え…私って「友達=馬」って扱ってたの…?しかもそれを彼はあっさり受け入れてたの???この世界色々すごい…!
「なるほどね、教えてくれてありがとう!すごく助かったよ!」
私は右手の親指をピンと立ててそう言った。
「うん!姉さんテスト頑張ってね!僕もすることがあるから行かないと。」
「じゃあまた帰りに!」
そんな会話をして私たちはそれぞれの戦場へ戻った。戦場へ。
私の席に誰かが座っている。私の教科書を読みながら。
そしてそれをジアン様が怪訝な目で見つめてる。こわい。
「ア、アレン?それ私のなんだけど…」
「!いや話終わってねーのにルアが急にいなくなったんだろ?」
なぜか目をキラキラさせながらアレンが立ち上がった。
ほんとにアレンで通じるんだ…おもしろい!!
「さっきは俺のこと忘れてるんだと思ったけど、わざとだったんだな!よかったよ!」
それはわざとじゃなくて本当です。
と言いたかったけどグッと堪えて「そんなわけないじゃ〜ん!私たちの仲だよ?まさにベストフレンド!」って言ってやった。
「ルア…!!お前のそういうとこ大好きだぞ!」
「それはちょっと大袈裟。」
「ちっ。」
ルア、なんかすごい人と友達なんだなぁ…。
でも、確かにアレンは話しやすいね。いい友達になれそう。
「舌打ちしないでよ!」
「俺の好きを助け止めてくれたらしないかもな〜」
「は、」
やっぱり前言撤回。いい友達になれる気がしない。
そんな心の声とは裏腹に、私はにかっと笑って話していた。
そしてそんなやりとりを不機嫌そうに見つめる目も