95.
帰ろうとしていた歩みを止めるボク。
そして少し考える。
果たしてその声が本当にキミなのか。
でも、もしキミが本当に助けを求めていたら?
ボクはキミに助けてもらってばっかりで、何もキミに恩返しできていない。
東京に行ったときもそう。
ボクは自分自身にいっぱいいっぱいになっていて、
結局キミに何も恩を返してあげれていないのだ。
ゴクリと唾をのむ。
決心した。
もし例え聞き間違いだとしても、
怒られるのも、殴られるのも、慣れている。
近所迷惑だ、と怒られてもいい。
ボクはキミの助けになりたい。
ドンドンドン
今度は壁を強く叩く。初めてキミの名前を大声で叫んだ。
それほど必死だった。
ずっと学校に来ていないのは、
実はボクに罪悪感を感じていたからではなく、
家庭で何かあったのではないか、と。
何かだか奇妙な胸騒ぎを感じる。
扉の奥からは返答はなかった。
ガチャ
けれどドアノブを回すとその扉には鍵がかかっていなかった。
この際、キミの保護者に不法侵入で怒られてもいいや、と決心した。
何よりもボクはキミの助けになりたかったから。
ボクは玄関扉をあけた。あけてしまった。
パンドラの箱を。




