08.
あの日以来、キミはまた学校には来なくなった。
けれど、なぜかネコヤギには毎日現れた。学校に登校していないのにも関わらず、いつも制服を着て、いつもの席に座ってボクを待っていた。
「何で制服?」
「勉強してる気分になるから」
キミは本心を隠しているのか、乾いた笑いを浮かべそう答える。
「学校嫌いなの?」
なんで来ないんだろう?
ボクはてっきりキミは学校をサボって、他校の不良グループの人たちとつるんでるのだと思ってた。派手な見た目だったし、素行が良くない、という噂を学校で以前聞いたことがあったから。
でもたった数日キミといるだけでそうではないと、ボクは確信していた。学校に来ないのは何か他の理由があるんじゃないだろうか?
「……トだったの」
「え?」
「しごと…」
しごと。シゴト。仕事。
えぇっ!?中学生で仕事?
新聞配達とか!?
返ってきた答えが意外だったから、頭が少し混乱する。
「でも仕事だったなら、別に無理して制服を着て来なくてもいいのに…」
キミは目の前の壁を無表情でじっと見つめていた。
「せやんね。おかしいやんね…」
キミの声があまりにも寂しそうだったから、これ以上ボクは何も話を続けることができなかった。