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80.

18禁にならないように気を付けていますが、15禁にはなると思います。

 「ボクはその子から逃げたんだ」


 キミはボクの腕をずっと優しく撫でてくれる。

 そんなに優しくされるような人間でもないのに。


 「逃げるようにして帰ってきた家は地獄だった。

  あの日は母さんの仕事の日。

  家にはあの男一人しかいないのに筈なのに、誰かと話す声がするんだ。

  テレビの音ではなくて、人と人の話し声」


 あの日の事を思い出すと頭に血が上る感覚が未だに感じる。

 やっぱりあの男を許せないし、あの男と血が繋がっている自分が怖い。


 「声は両親の寝室から聞こえてきた。

  あの人の浮気だったらどんなに良かったのだろう…。

  ボクは音を立てないように忍び足でそっちに向かった。そこにね」


 ボクの瞳からは涙が溢れてくる。

 あの日の光景は今でも忘れない。


 「親友が襲われていたんだよ。ボクの父親だった人に」




~~~~~




 彼は塾の日だった。

 だけどその日急な休みになって、ボクに会いに来たんだ。

 あれほど口酸っぱくなるほど、ボクの家に来ないでって言っていたのに。

 彼はボクの忠告をそこまで深刻に考えていなかった。


 なにせ、彼にとってはボクの家は第二の家。

 あまり気にせず今までのように来てしまったみたい。


 家のチャイムを鳴らすと、男の声がした。


 - 今日はおじさん休みの日だったのか…


 そう思ってボクが在宅か彼はインターホン越しに聞いたんだ。


 『すぐに帰ってくるから、家で待ってなよ』


 元親友は何も疑わず、あの男に言われるがまま家に入った。


 あの人も分かっていたはずなのに。

 ボクがお使いから帰ってくる時間の事くらい。


 でもあの人は元親友の声を久しぶりに聞いて、

 理性より欲望が勝ってしまったんだ。


 『最近あの子がひどく落ち込んでて…』


 そして彼の優しさに付け込んで、

 あの手この手の話でなぜか元親友を寝室まで連れて行って…。



~~~~~



 「おかしいだろ?男なのに…男なのに…」


 キミが生唾を飲み込む音がする。

 信じたくないけれど、現実に起こった話。

 ボクがこの目で見た真実。


 「ボクはあの人が、

  元親友のズボンの中に手を入れているところを目の当たりにして…。

  その…しかも…」


 あの時の光景を思い出すと吐き気がする。

 どうしようもなくなるほど気持ち悪くなる。


 キミはもういいよっと言わんかの如く、

 ぎゅっとボクの腕をきつく抱く。

 けれどボクの口は止まらない。


 「その光景に頭にかっと血が上ったボクは…。

  寝室に置いてあるアイツのゴルフクラブで男の頭を思いっきり殴ったんだ」


 手をグーパーする。

 人を殴った時のあの鈍い感触は忘れたくても忘れられない。

 頭に、体にこびりついて離れてはくれない。


 「でも、アンタは友達を守ってあげたかっただけでしょ?」


 「どうだろう?」


 最初はそうだったのかもしれない。だけど…。


 「アイツを殴った時、簡単に男はその場に倒れこんだんだ。

  これで最後。次で最後。

  そう思うのに、ボクは自分の手を止められなかった。

  最近暴力をうけている母さんが頭に過ってさ、

  いつもそんな風に威張っている男が

  『やめてくれ…』って小さな声でボクに懇願しているこの光景に…。  

  なにを思ったのか、ボクその時嬉しかったんだ。

  母さんを虐めている男より、

  今この瞬間はボクが一番強いんだ、という現実に。

  元親友はいつの間にかボクの家から逃げていっていた。

 

  でもボクはそのことに気が付かず、

  ずっとずっとその間笑って男を殴っていたんだ。


  男は血だらけの顔で振り返り、ボクにこう放った。


 『やっぱり俺の子だな』って」




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