79.
冬休みの間、
ボクはいつもと変わらずほとんどの日々を彼と一緒に過ごした。
ただ、変わったことと言えば、外で遊ばなくなったことと、
ボクの家に彼を招待しなくなったこと。
『最近おばさん会ってないけど元気なの?』
『うん…』
元幼馴染は日が経つにつれて元気になっていく一方で、
ボクは、ボクの家族はバラバラになっていた。
きっかけは分からないけれど、
ある日を境にあの人が母さんを殴る様になった。蹴るようになった。
いつも同じことを繰り返して。
『家族全員で地獄をみたいのか』
家は常に緊張した空気がピンと張っていた。
だから家にいることが嫌で、
もっぱら元親友の家に入り浸ることが増えのだ。
『何かあれば俺でよかったら相談乗るから』
いつもボクに寄り添ってくれた彼。
『中学でも同じクラスになればいいな~』
ボクとの未来を楽しみにしてくれた彼。
『もう俺ら兄弟みたいなもんだから。辛かったらさ、本当に言えよ?』
ボクは、ボクたちの家族はキミを裏切ってしまう。
最悪な形で。
*****
『あ、明けましておめでとう』
『おめでとう』
三学期が近付いてきた頃、
あの人に頼まれて、近所の酒屋にお酒を買いに行っていたその帰り、
近所である女の子にあった。
天パでクリクリした淡い栗色の髪の毛が特徴的な彼女は、
あの亡くなった女の子と最後の日に遊んでいた女の子。彼女の親友。
『もうおたふく大丈夫なの?』
『うん…。じゃ、また学校で』
何だかソワソワしてしまう。
天パの女の子を見ると、
いつも彼女と一緒にいたあの女の子を嫌でも思い出してしまう。
そして、彼女のことを思い出すだけで何か得体の知れぬ罪悪感がボクを襲う。
天パの子と一緒にいるだけで、会話するだけで、
なんだかボクが悪者になったような気がしてしまうから、
そそくさと話を切り上げ、家へ帰ろうとするボク。
『あ、ねえ!』
でも彼女はそれを許さなかった。
『思い出したの』
『何を?』
ボクは分かっていたんだ。
毎日一緒にいる家族だもの。違和感なんてすぐに分かる。
ボクは直感で、あの人が事件にかかわっている、ということに、
本当はきっともっとずっと前から気が付いていた。
『あの日、おじさんが声をかけてきたの。
見覚えがあるけど、誰だって思い出せなくて…。
でも、そうよ。あのおじさんって…』
この天パの女の子の続きを聞く前に逃げ出した。
聞きたくなかった。怖くなった。
まさか、自分の親が事件に関わっているだなんて、
死んでも信じたくなかったから。




