表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/104

77.

 「ねぇ、それってもしかして…」

 キミの声がいつもより、よりハスキーな低い声になった。

 ボクは頷く。

 「そう。その日彼女は亡くなったんだ」



~~~~~



 何やら両親が言い合っている声がする。

 まだ頭が痛いけど、少しお腹がすいた気がするし…。


 ボクは重たい体をひきずるようにしながら、

 リビングへと向かった。


 『あんなことがあったのに、どこ行ってたの!?』

 『色々あったっていってるだろ!』

 『あの子に何かあったらどうするつもりだったのよ!』

 『うるせぇ!』


 バチン


 大きな音が冷たい家に響いた。


 『お…かえ…り…?』


 両親の不穏な空気を割る様に、

 ボクはさも何にも気が付かなかった風を装って、リビングに入った。


 なぜ母さんがそんなに怒っているのか分からなかったけれど、

 少しの会話を聞くにあの男が母さんの言いつけを守らず、

 ボクを置いて暫く外出していたことに腹を立てているようだった。

 ボクは別にあの人が家にいなくても特に不便はなかったのだけれど、

 何か近くで事件が起こったみたいで、

 その事件の最中、あの人が外出していたことに

 母さんは不安と心配の感情が混ざり合い怒っていたのだ。


 親として子の無事を心配するのはごく自然で当たり前のことだと思う。

 だから、あの時何で母さんがあの人に頬っぺたを叩かれたのか、

 ボクにはさっぱり理解することができなかった。


 『おかえり…』


 フラフラしながらリビングに現れたボクを母さんは力いっぱいに抱きしめる。


 『ああ、良かった。無事でよかった』


 母さんの体は震えていた。


 母さんの顔は涙で濡れていた。


 母さんの頬は真っ赤に腫れていた。


 

 母さんが何に怯えていたのか、ボクには良く分からなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ