73.
東京タワーであった男の子とボクは幼馴染だった。
階数は違ったけれど、住んでいたマンションが同じで、
加え、互いの母さんの年齢が近かったのもあって、
幼いころから一緒に過ごすことが多かった。
だから【兄弟】のように育った、と言う方がしっくりくるかもしれない。
兎に角、一番気が許せて、仲の良い友人であることには違いなかった。
小6の時、お互いの秘密を言い合う、ってことがあった。
ボクはロマンチストに思われるのが嫌だったから言わなかったけれど、
【星空を観察するのが好き】っていう秘密を打ち明けた。
まあ、実際のところ隠せてはいなくて、彼は知っていたんだけど…。
で、彼はボクに【好きな人】を打ち明けてくれた。
ボクは寝耳に水だった。
だって、目が合えばお互い悪口言い合っていつも喧嘩ばっかりしていたからさ?
ボクは逆にその子は彼にとっての苦手な女の子、とばかり思っていたんだ。
でも実はその逆で、本当は仲良くしたいけれど、
つい口から出るのは、思いとは真逆の言葉ばかりだったって知った時は、
なんだか彼がボクより先に大人に近づいているように当時は思えたんだ。
その彼が恋をしていた女の子は、ボクたちの向かいのマンションに住んでいた。
当然集団下校や登校で顔を合わせることが多かったから、
彼の気持ちを知った後は、二人が言い合っているのをニヤニヤしながら見てた。
『顔に出すぎ』ってよく怒られたけど、
二人が仲良く喧嘩している姿をみるのが、その時はすごく嬉しかった。
そんなある時聞いたんだ。
『そう言えば何でボクに秘密を打ち明けたの?』って。
『転校するんだって、その子。
だから告るかどうしようか悩んでて…。
相談したかっただけ』
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当時のことを思い出すと、
なんて素敵な思い出だったのだろうと、ボクは感傷に浸る。
「いい友人やったんや」
「まぁね」
「その頃は笑えてたの?」
「まぁ、人並みに…」
キミがこっちにゴロンと体を傾けたのがベットの軋む音から伝わってきた。
ボクは気にしないように、
豆電球の光を見つめながら話を続けることにした。




