06.
「おっは~」
次の日、後ろからかけられた声に肩をビクリと震わせる。
キミは週に一度出席すれば御の字の不良女。にも関わらず、二日続けて登校してきたキミの姿に驚いたから。
「え、何で?」
「ん、何が?」
「何で学校に来てるの?」
「え、学校に来ちゃダメなの?」
いや、別に悪くはないんだけど…。
驚くキミの声に何も返答なんてできない。
「ボクに話しかけたらキミもイジメられるよ?」
だから一応優しさで忠告する。
「大丈夫」だけどキミはそう言って笑い飛ばす。「もしそうなっても、チン〇蹴り上げてやるから!」
*****
部活も休みになる、定期テストの一週間前。
昨日は何故か例外だったが、基本この週間はイジメはなく、ボクにとっての天国とも呼べる幸せな日々。
中学最後のこの年。高校の推薦を狙っているアイツらはテストの点数が一番だから。勉強に忙しくなるこの週間は、イジメをする暇がないだけなのだけれど…。
だからその分怖いんだ。テストの後はアイツらのストレス発散で、見境なく力加減無しに攻撃してくるから…。
ま、そんな事情なんて、学校に来ない不良娘は知らない。
「今日は思ったより絡まれなかったね?」
棒付きキャンディーを口に含みながらキミはボクに尋ねる。
今週は平気週間だから…、なんて恥ずかしくて言えるわけもなく、「そだね」と言葉を返す。
「それよりどこ向かってるの?」
「何でついてくるの?」
「細かいことは気にしない、気にしない」
いつも楽観的に笑うキミがボクには眩しい。
「ネコヤギ」
「?猫?山羊?え?動物園?」
「ネコヤナギホール」
「なにそれ?」
「市民ホール。小さいからあんまり人に知られてないんだ」
「ふ~ん。でも何しに行くの?」
「え、勉強…」
何言ってるんだ?とキミを見るボク。
「べ、勉強!?」
何言ってるんだ?とボクを見るキミ。
「来週からテストだし…」
「そっか…。全然学校行ってないから知らなかった…」
「キミはどうするの?帰る?」
「いや、面白そうだしついてく」
テスト勉強の何が面白そうなんだろう?
キミがよく理解できなかったから、キミを野良猫の類と思うことにした。