67.
シャワーを浴びる。
生暖かいお湯がボクの中にあったシコリを流してくれる。
シャンプーをしようとポンプを押す。
けれど、そこからは何も液体が出てこない。
はぁ、とため息をつく。
自分の家が少し恋しくなった。
頭を洗うことは諦めて、体を洗う。
備え付けられていたスポンジは少し黒ずんでいて、
とてもじゃないけれど使いたいとは思えなかった。
手で液体を泡立てて、体を洗う。
この液体も少し変わった匂いがしたけれど、
汗でベタベタだった体がすっきりしていくことに変わりはない。
そして、全てを洗い終えた今、
鏡の前で随分と顔色が良くなった自分を見て、
今の状況を少しずつ飲み込み始める。
母さんに内緒で無断外泊。
その上、同級生とラブホで一泊。
おかしい。
普通に考えておかしい。
理性を取り戻したボクは今のこの状況を受け入れられないでいた。
ただただ虐めに耐え抜いて、勉強だけしていたボクが、
いつの間にか不良娘のキミとこんなにも仲良くなって、
一緒に旅行して、こうして一緒にホテルで一夜を過ごそうとしているだなんて、
あり得ない。いったいどこから狂い始めたのか。
ボクは両手で顔を覆う。
シャワーのお湯を浴槽にだしたまま、
ボクは浴槽の端に座り込んで考え込む。
ボクは今からどうしたらいい?
あの部屋にはソファーはなく、椅子が二脚と小さなテーブルが一つ。
それからカビと生乾きの臭いのするセミダブルのベットだけ。
キミと同じベットに一緒に寝て、一夜を過ごす?
思春期の男女が??
てか、本当に一緒に寝てもいいのだろうか?
いや、いいに決まってるか。
だって、よくよく考えてみたら、昨日も一緒に寝たしな…。
でも…。
頭がフラフラしてきた。
いつもと違う環境で、
その上、いろんなことが起こった一日だったから。
知らず知らずのうちにストレスを感じ、ため込んでいたのだろう。
「ちょっと、大丈夫~?長くない??」
キミの声が聞こえてきたと思ったら、ボクの目の前が突然真っ暗になった。




