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65.
少し型の古いエレベーターは、
ガタガタと激しく揺れて、ゆっくりと動く。
無言が少し辛い。
耐えかねたボクは、「ラブホって前払いなんだね」
と、この無言を破ることにした。
「そんなことないやろ。基本は後払いとちゃう?」
「?」
「中でフードとか、ドリンク買う人もおるし」
「でも…」
「ま、自殺する人が多いんとちゃう?死んだらお金もらえんし(※)」
だから、ここはきっと前払いなんやで~とキミは気楽に続けるが、
ボクは逆に緊張が高まってしまった。
なんだかより微妙な空気になったような気もする。
チン、と音がしてようやく3階につく。
小さな共有フロア。
やっぱりここも、かび臭い匂いが漂っている。
ボクたちはエレベーターを降りて、周りを確認する。
そこにはたった3つの扉しかなかった。
各扉の上に書かれている部屋番号を確認する。
301、302、303
「303やって」
ボクにとっての初めてのラブホ。
感動も甘い雰囲気も一切を感じることなく、
ボクはキミと共に部屋へと入っていった。
(※)女の子視点の偏見です。そんなことはありません。




