63.
どのくらい泣いていたんだろう。
時間なんて分からないけれど、ボクが涙を流している間、
キミは何も聞かずに、ずっとボクの頭を撫で続けてくれていた。
「今日はもういいからさ、休憩しよう?」
少し涙が枯れ始めてきたころ、
キミはそう囁いて、ボクの肩を優しく抱きしめた。
*****
「どこに行くの?」
泣きつかれたボクは辺りの景色を見渡してそう尋ねる。
キミはボクを引っ張って、東京の中心にも関わらず、
光のない、真っ暗で怪しげな裏通りに入っていった。
少し恐怖を覚える。
そういえば、
”見回りおじさんを探さなくていいの?”
そうボクが言葉を発する前に、
「ラブホ」とさも当たり前のようにキミは返答する。
ラ、ラブホ!?
ボクはプチパニックを起こす。
「え?な、な、な、な何で!?」
「どもりすぎだって」
キミはケラケラ笑う。
「いやね、ウチらみたいな未成年が一夜をやり過ごすにはさ」
キミは迷うことなく一直線に裏通りを歩みながら答える。
まるで目的地の場所を既に知っているかのように。
「カラオケとかネカフェとかやとね、
年確(年齢確認)厳しんやけど、
ラブホとかやと、まだまだ緩々なとこいっぱいあんねん」
なんでそんなとこ知ってるのさ?
心の中でそんな疑問が浮かんできたけれど、
そんなこと聞かない方がいいに決まっている。
頭を振って、
モヤモヤとした感情と共にその疑問を頭の中から払拭する。
やっぱりボクはキミに導かれるがまま、
光のない裏道を歩き進んでいった。




