62.
東京タワーの外にでたボクは、
行先を決めずにただ目の前の道を歩いていた。
「!!!!!!!」
生暖かな風がボクの頬をかすめる。
ボクはキミに先程のことをどう説明しようか考えていた。
「!!!!!!!!」
周りの音なんて何も聞こえない。聞きたくない。
見回りおじさんを探すまでの自由な時間。
ただただキミとの”今”というその時間を楽しみたかっただけ。
やっぱり、
犯罪者の家族はそれすら許されない行為だったのだろうか?
涙があふれてきそうになる。
「ねぇ、ちょっと!」
キミの叫ぶような大きな声に、ようやく我に返るボク。
何度もボクに呼び掛けていたのだろう。
キミの声は少しかすれていた。
「痛いんだけど」
ボクは立ち止まる。
忘れていた。キミの手首を掴んだままだった。
「ごめん…」
咄嗟に手を放す。
ボクがぎゅっと力強く握っていたせいで、
キミの手首は赤く腫れあがっていた。
それを見てボクは心を痛める。
ああ、本当に申し訳ないことをした…と。
「そんな落ち込まんでも」
手首をくりくり回しながら「ほら、全然平気」と、
目じりを下げてほほ笑むキミ。
「ねぇ、嫌なことがあったら泣けばええやん」
いつかキミに言ったボクのセリフ。
ボクの視界は潤み始める。
いいのかな?こんなボクが泣いてもいいのかな?
ボクが悪いのに、悲しんでもいいのかな?
キミはボクの頭を優しくなでる。
「一番仲が良かったから…」
ボクの目からは何度も何度も留まることなく、
しょっぱい雫が頬を伝っていった。




