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59.
「え、何?どういうこと?」
可愛らしい声が耳に入る。キミと違って高い女の子らしい声。
直ぐに元親友と一緒にいる女の子から発せられたものだ、と理解する。
ボクは鼻をすする動作をして、
気づかれぬようにそっと涙の跡をぬぐい、元親友と目を合わせる。
元親友の後ろに隠れている女の子が、
困った顔でボクたちを交互に見ているのが視界に入った。
「コイツんちはな?」
冷たい声でボクを指さしながら声を発する。
ガヤガヤとした音なんかもう聞こえなかった。
ただ元親友の声が大きく、鮮明に耳に入ってくるだけ。
ボクはキミに知られたくなかった。
ボクの汚い過去のことなんて。
ボクの記憶から消し去りたい人のことなんて。
「人殺しの家庭。
コイツの親父は、俺らの同級生を一人殺したんだ」
”人殺し”
そう、ボクは人殺しの息子。




