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56.
東京タワーの最寄り駅に着いた時にはもうすっかり空は暗くなっていた。
代わりに色鮮やかで煌びやかな光たちが地上を照らしていた。
ボクたちは他愛もない話をしながら、東京タワーへと向かい、
展望台へと上るチケットを買った。
東京タワーから見る景色。それは以前となんら変わり映えのないものだった。
東京に住んでいた時、何度も父とここに来た思い出が蘇る。
その途端、スカイツリーよりずっと高さは低いはずなのに、
なぜか急に強い恐怖を覚え、吐き気を催した。
頭がグルグルと回り始める。
キミに変な誤解や心配をかけたくなくて、
「ちょっとトイレ行ってくる」
そう言ってボクはこの場から少し離れることにした。




