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「わ~テレビで見た事ある風景!」
「それって喜んでるの?」
「普通にテンションは上がってんで!」
久しぶりに嗅ぐこの排気ガスと煙草とゴミの臭い。
ボクにとっては気が滅入るだけの出来事も、
キミはとてもはしゃいで楽しんでいた。
そんな眩しいキミの笑顔を見るだけで
ボクは何となく気分が軽やかになり、明るい気持ちが芽生えてくる。
「もっかい!もっかい!」
何がそんなに気に入ったのかは分からないが、
キミは何度もボクに笑顔で
人差し指で”1”の数字を作り見せてくる。
キミの注文にボクは真顔で頷き、
人通りの多い交差点を無意味に何度も往復した。
「今日はおらんな~DJポリス」
「イベントじゃないのに、いるわけないだろ?」
「でも、あれも少し観光化してきてるやんか」
ニヤニヤと笑うキミにボクはため息をつく。
「あそこは見ないの?」
目の前の大きなショッピングセンターを指さしボクは聞く。
確か女子は買い物が好きだったはず…。
「いや、いい。興味ないし。自由に歩き回っている方が楽しい」
キミのその答えにボクは少し肩透かしを食らった。




