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50.
「東京って初めて来た」
終点の一つ前で降りるボクたち。
にも関わらず、たくさんの人、人、人。
慌ただしい人たちの中にボクたちはポツンと立っていて、
場違い感を感じる。
この中からたった一人の人を見つけよう、とボクたちはしているのか?
見回りおじさんに合う確率なんてほとんどないかもしれない。
絶望してきた…。
「今からどこに行くの?」
ボクの不安な声にキミは二かっと笑う。
「まずは楽しまなきゃ!」
「へ?」
身構えていたボクのことを知ってか知らずか、
キミはボクの手を引き、地下鉄を軽やかな足取りで目指す。
「ほら、東京の観光地教えてよ!
どこ最初に行く?」
楽しそうにするキミを見てボクは肩透かしをくらう。
「じゃあ、渋谷にでも行く?」
「ええやん!定番中の定番やけど!」
キミが本当に悩んでいるのかどうか分からなくなってしまって、
ボクは少し微妙な感情を抱き始めていた。




