04.
「ねぇ、何で抵抗しないの?」
アイツが取り巻きたちと帰ったのを確認したのか、隣の女子トイレからひょいっとタイミング良く顔を出す不良娘。
「もう、意味ないから…」
そう返すボクをキミは笑い飛ばす。
「アイツらのチン○切り落としちまえばいいのに」
ケラケラ笑う不良娘を片目に、女の子が何を言ってるんだとため息をつく。
「ねえ、アンタはあるの?」
「なにが?」
「チン○」
ブッと、思わず口から変な声が漏れる。
「え、えぇ!?」
「ちっちゃそうよね」
ボクの動揺なんてなんのその、不良娘は短いスカートのポケットから徐にソレを取り出す。
「吸う?」
「まだ未成年だよ」
「細かいことは気にしない、気にしない」
彼女はタバコに一本火をつけてボクに渡す。
甘いバニラの香りが鼻をくすぐる。
「掃除、おつかれちゃん」
キミと間接キスになることに少し戸惑う。だけど、キミはそんなこと考えていなかったのか、無邪気な笑顔でそれをボクに押しつけてくる。
「嫌なことあれば笑えばいいよ」
もう笑い方なんて忘れたよ…。
でもその言葉は口に出さずにぎゅっと飲み込む。
ねぇ、知ってる?
ボクだって始めはそれなりに抵抗してたさ。
でも、それをしなくなったのは…。もう諦め癖がついてしまったのは…。
よく考えてみた。
ボクをこんな風にしたのはアイツだけじゃない。キミたちもなんだから。
ボクにとっては傍観者のキミたちも加害者なんだ。
怒りが沸々と湧いてくる。どうもやりきれない。
だから、キミに冷たく八つ当たりなんてしてしまった。
「キミも見て見ぬふりしてたくせに、分かったようなこと言うなよ」