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45.


 「おい」



 後ろから酒臭い匂いと共に、

 ドスの効いた低い声で話しかけられた。

 予想だにしなかった展開にボクの背筋は凍る。


 「おい、兄ちゃん」


 無視をしたいわけではない。

 ただただ、恐怖で足が立ちすくんでいるだけである。

 でも、キミを待っている間に何か問題を起こす方がいけない気がして…。


 「は…はい」


 震える声とともにボクはゆっくりと振り返った。


 そこにはジロジロとまるで品定めでもしてくるような

 嫌な視線を送ってくる無精ひげを生やした男がいた。

 

 あっちに行ってほしい。早く目の前から去ってほしい。

 冷や汗を背中に感じながらボクは緊張の面持ちで男と目を合わす。

 

 「お前もこれか?」


 今度はニタニタとした気味の悪い笑顔をその顔に貼り付けて

 変なジェスチャーをしながらボクに声をかけてきた。


 人差し指と中指に親指を突っ込む不思議なジャスチャー。

 ボクは首をひねる。


 「ハハハ。なんや、ビビってんのか」


 彼の口の中がチラリと見える。

 歯はほとんどなく、

 なぜか金色に光っているものが奥の方にあるのが確認できただけだった。


 「そ…の…」


 「兄ちゃん、チェリーを捨てに来たんやないんか?

 そんな緊張せんでもええって」

 

 ハハハと再度豪快に笑う。酒臭い親父。

 臭い。とにかく、とてつもなく臭い。


 「ただな、なんかこの前色々あったみたいで、

 今はおらんみたいやで。金あるなら他の子紹介したろか?」

 

 ボクは懸命に首を振る。

 お金をせびられるかもしれない恐怖と、

 なぜか話の通じない男に恐怖を覚えたからである。


 「ハハハ、ま、いつでもいいから気が向いたら電話してーや」


 ボクのポッケに男はぐしゃりと何か物を詰め込むと、

 そのまま手をひらひらさせながらその場を去っていった。

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