40.
カー
カラスの声で目を覚ます。
横ではキミはぐっすりと寝息を立てていた。
カーテンを少しだけあけて外を見る。
雨はすっかり上がっていて良い天気だった。
台風一過だ、とボクは胸をなでおろす。
ボクはキミを起こさないように気をつけながら、
ゆっくりとベットから降りて部屋を後にする。
時計を見る。針は6時少し過ぎを指していた。
母さんはまだ帰ってきていない。
でも、夜勤ももうすぐ終わるはず…。
その時はっと思い出す。
母さんがキミを良く思っていない、ということを。
どうしよう?
夢から覚めた気分になった。
決して悪いことではない筈なのに、
急に悪いことをしてしまったのような
そんな後ろめたさを感じ始める。
だから母さんが帰ってくるまでに
早くキミを連れてこの家から出たかった。
キミがボクの家で一夜を過ごしたことを、
どうしても母さんに知られたくなくなったのだ。
ガタッ
ボクの部屋から音がした。
キシキシと床が軋む音もする。
どうやらキミが起きてきたみたいだ。
ボクは昨日のキミの乾いた服をかごに入れて、
寝起き姿のキミに手渡す。
無防備なキミの寝起き姿はとても神秘的だった。
「キミの服乾いたから、部屋で着替えてきなよ」
それにしてもボクは卑怯だ。
「期末テストの時の約束覚えてる?」
キミをこの家から早く連れ出すためにだけについたこの提案。
「今から行こうよ。東京に」
それがキミをどれだけ喜ばせて、どれだけ傷つけるか、なんて
何も分かってなかった。




