39.
心臓がこれでもかってくらい強く鳴り響いている。
でもボクはこの緊張がキミに伝わらないように、
ポーカーフェースを保ったまま
ボクのベットの上を占領しているキミの隣にもぐりこむ。
いつもと変わらないボクの部屋、ベットの匂い。
それなのにも関わらず
キミの体温を感じるだけで、
ここがまるで全く別空間のような、
特別な場所のようなそんな気持ちになってしまう。
ドキドキと未だ鳴りやむことのない強い強い鼓動音。
これが緊張からくるものなのかどうかなんて、
ボクには何も分からない。
キミに背を向け、部屋の扉をじっと見る目ながら
ボクは無心になろうと頭を空っぽにしようとする。
「ねぇ?」
キミの息がボクの首元にかかる。
痺れるような甘い刺激がボクの胸に響く。
「何もきかないの?」
「いったい何を?」
恥ずかしい。キミに答えるボクの声は震えていた。
クスクスとキミが笑う吐息が首元をくすぐる。
「いいの。聞かないなら、それはそれで」
本当はキミに聞きたいことは沢山あった。
だけど、あえて何も聞かなかった。
一人で何でネコヤギにいたのか。
その顔に見えるキズも、痣も。
何で学校にまた来なくなってしまったのかも…。
ボクは臆病だから。
キミの心に踏み込むことが、
キミを傷つけてしまうかも、
キミにより強固な心の壁を作られてしまうかも…。
そんなことばかり考えていた。
それに、ボクはキミと違って弱いから。
キミに聞いたとしても、
ボクはキミを救えない。助けてあげられない。そう思ったから。
だから、言葉を飲み込んで何も聞かなかったのだ。
「二学期からは学校に来るの?」
話題を変えた。
「分からない」
キミの声は小さかった。
「ウチ、どうしたらいいのか本当に分からないの…」
今でもこの判断は間違っていたのか、どうだったのか、疑問に思う。
あの時に頭に浮かんだことを全てキミに伝えていたら、
もっと早くにキミの現状を知っていれば、
こんなことにならなかったかもしれない。
キミを悲しませることなんて、
母さんを泣かせてしまうことなんて、なかったのかもしれない。




