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35.
キミがボクの家にいるってなんだか奇妙だ。
いつもと同じ家、同じ部屋。
なのになんだかいつもより色付いて見える。
でもキミはそんな事なんとも思ってないのか、
ボクの体操服を着て、自分の家のようにくつろいでいた。
「カレーあるよ」
「カレー?」
「母さんが作ってくれてたんだ」
キミが目を輝かせながら近づいてきた。
そんなキミの顔にボクはほっとする。
もうずいぶんと調子は戻っているみたい。
「おなか減ってる?」
「ううん。でも、食べたい」
和らげに笑うキミの笑顔は
ボクの胸をぎゅっと締め付けるものだった。
カレーを温めなおして、二人で静かにご飯を食べる。
カチャカチャと食器の音だけが響き渡る。
自分の家なのに緊張する…。
けれど、キミの食事の食べ方を見て、ボクはブッとむせてしまう。
「もっと丁寧に食べなよ」
キミの食べ方はボクにとっては初めて見るもの。
犬のように皿に顔を近づけて食べる、変わった食事方法。
けれど、ボクはそれを注意することはなかった。
だって、
キミは何故か満面の笑みを浮かべて幸せそうに食べていたから。




