32.
「ここが風呂場だから。軽くシャワー浴びといで。すっきりするよ」
「ん」
キミがシャワーを浴びている音をリビングからぼーっと聞いていた。
キミが二人きりだとか変なこというから、ボクも変に緊張してきた。
この胸のざわめきに蓋をするように、
ボクは今朝母さんが作ってくれていたカレーを温め直すことにした。
「シャワーありがとう」
少ししてキミが風呂場から出てきた。
ボクや母さんと同じ匂いを放っているキミ。
「ドライヤーで乾かしなよ」
全く乾いていない濡れた髪を見ながら、
ボクはドライヤーを手渡す。
「フフ。ねぇ、乾かしてよ」
「…。は?自分でやりなよ」
「やだ。やってや」
急に変に甘えだすキミに戸惑いながらも、最終的にはボクが折れる。
「こっちきて」
ソファーの横をポンポンと叩いてキミを呼び、
子供をあやすようにキミの濡れた髪を乾かしてあげることにした。
ドラーヤーで髪を乾かしながら、うなじ越しにキミを見る。
なんだかさっきから胸のドキドキが止まらない。
ボクはそんな胸を少し撫でながら自分に言い聞かせる。
胸の鼓動よ、なくなれ~なくなれ~。
おさまれ~おさまれ~っと。




