02.
「人の机に何やってんの?」
学年一のレアキャラ、週に一度登校すれば御の字の不良女。
キミの声は顔に似合わずハスキーボイスだった。
なんて運というか…、間の悪い娘なんだろう…。
机の上には黄色い液体が溜まり始めていた。ツンとした臭いが教室中に広がる。
「お前漏らすなよ、くっせぇ!!!」
ケラケラ笑うアイツに、
「なぁ、あんたらに言うとるんやけど」
眉間に皺寄せキレるキミ。
こんなガタイのいいデカくて厳ついアイツに臆することなく意見できるなんて…。
なんて恰好良い女の子なんだろう。
「おい、不良女。お前どこに目ぇつけてんねん!俺やなくて、コイツがしょんべん漏らしただけやんけ」
ボクを指差し責め立てるアイツ。
「ごめん…」
もう反射神経のように口から零れる謝罪。
でも、実際に思ってるんだ。本当にごめんねって。
だって、もし白い液体を出せていたら、もっと机も教室も被害は少なかったはずだもの。
ほら見てよ。ボクの黄色い液体はもう床にまで広がってしまった。
「お前も人の机、蹴り倒しとったやろ!」
アイツに掴みかかるキミ。
「女でも容赦せんぞ、ボケェ!」
アイツに殴られるキミ。
ボクは見ているだけ。二人の間を広がっていくあの液体を。
「何してるんだ!朝のチャイム鳴ったの聞こえなかったんか!」
ザワザワしているクラスメイト。
怒鳴り込んでくる白髪頭の担任。
「お前ら朝から何してんだ!」
担任と目があった。ボクの助けを求める目に気づいた筈だ、なのに…。
「コイツが不良女の机にしょんべん漏らして、で、不良女がキレてるだけっす」
こうアイツが言葉を添えるだけで、厄介ごとには蓋をするんだ、この大人は。
「またお前か!さっさと掃除しろ!臭いもこもるだろ!ほら!窓も開けて開けて!!!」
ボクが虐められていたのを見ていた筈なのに、誰も助けてくれないクラスメイト。
そして虐められていることを知っている筈なのに、何故か担任に怒られるボク。
誰にも期待してはいけないんだ。
しょうがないから、干してあった雑巾で床を乾拭きすることにした。




