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27.

 「今日はさすがに家で勉強するでしょ?」



 台風が近づいてきていた。

 ボクは母さんに返事をせずに強風の中レポートしているテレビの中の女性のレポーターを見つめる。

 彼女によると、関西地方の電車はほとんど止まり、交通はマヒ状態、とのこと。『外に出るのは危険です』と何度もアナウンスしている。


 「母さんは、タクシーで仕事行くから」


 嫌になっちゃう、と言いながらいつものように軽く化粧をする母さん。ほのかに漂う母さんの化粧の匂いに、キミの頬からも香ったあの懐かしい化粧臭さを思い出す。


 「こんな日でも仕事はあるなんて…」


 母さんの愚痴を聞きながらも、ボクの頭の中は、もうキミのことでいっぱいになっていた。なぜかは分からない。けれど、キミは普通の子とは違い、少しひねくれているところがあるから、だから…。こういう日に限ってネコヤギにひょこっと顔を出すようなそんな直感がした。



 「今日は夜勤?」

 「うん。こんな天気の悪い日に一人にしちゃってごめんだけど…」

 「ボクはもうそんな子供じゃないよ」


 母さんはボクのその言葉に少し寂しそうな表情を浮かべる。

 「明日の朝、終わったらすぐ帰ってくるから。また夜の休憩時間に一度電話するわね」


 そう言って母さんはバタバタと雨風強い外の世界へと出かけて行った。


 母さんのそんな立派な後姿ににボクは「気を付けて」といつものように声をかけて送り出した。

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