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26.

 ミーンミンミンミーン



 蝉の声がうるさい。

 部屋を閉め切ってエアコンをつけていても、この五月蠅い蝉の歌声は部屋のわずかな隙間から大音量で聞こえてくる。もう八月だ。あれからもう一か月近くキミと会っていない。


 「今日も勉強しにいくの?」

 「うん」

 「あんまり無理せんようにね」


 夏休みに入ってからというもの、ボクは毎日ネコヤギに通った。キミとすれ違いにならないように、開館時間の朝10時から閉館の21時まで。ボクは一日中勉強していた。キミといつか会えるかもしれない、と信じて。


 「最近あの女の子みないね。元気にしているんかねぇ?」


 毎日毎日来ているものだから、職員さんともボクは顔見知りになっていた。キミのことを心配している人は他にもいる。それがボクにはとても心強く思えた。


 キミに会う前だったら、きっとこんな風に声をかけてきてくれる職員さんの声もうっとうしい、とか感じていたに違いない。でも今では自然に会話をすることができる。これも全てキミのおかげだ。キミがボクの冷え切っていた心の氷を少しずつ溶かしてくれたからだ。




 早くキミに会いたい。




 ボクはネコヤギに来ていても、勉強の事なんて上の空。いつしかキミの事だけを考えて一日を終えることがざらに増えていた。

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