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01.

 「おい、金」


 朝の挨拶の決まり文句の一つ。アイツは無表情に手のひらをボクに向けてそう言う。

 決してボクは〝金〟なんて名前ではないのだが、コイツは知らないのだろう。


 「もうないよ」


 嘘じゃない。既に今月のお小遣いはコイツに全て巻き上げられてしまったんだから。


 「じゃあ、盗んででも作ってこいよ」


 ボクの素直でない答えにイラついたのか、目の前にあった机を蹴り倒し威嚇する。


 可哀想に…。


 その机は不登校ではないけれど、殆ど学校にこない不良娘の席のもの。


 「さすがにもう無理だよ」

 

 母さんの財布からこっそり千円札を抜いて、この前バレたばっかりだった。あの日、しこたま泣きながら怒られたんだ。コイツの虐めより何倍も、何十倍も、何百倍も母さんの涙は堪える。


 まぁ、コイツにはそんなボクの感情なんて理解できないだろうけど。


 「誰にモノ言ってんだ!?あぁん!?」


 お前だよ。心の中でツッコむ。


 ガンガンとわざと大きな音を立てて、不良娘の机を蹴り続けるこの男。


 ほら、見てごらんよ。他のクラスメイトがお前に怖がって教室に入って来れないじゃないか。


 「金、作れないならどうすればいいか分かるよな?」


 胸ぐらを掴まれる。

 コイツとの付き合いなんてほんの数ヶ月。

 正直何を求めているのか、ボクにはサッパリ検討もつかない。


 「この机に射精しろ」


 コイツは本当に下ネタ好きだな。何かあったらボクに下半身を露出させる。

 初めの頃は恥ずかしかったけど、今はもうそんな感情何も感じない。


 だけど、さすがに皆んなに見られながら射精なんて無理。そんな趣味ない。


 教室の外にいる観客化しているクラスメイトたちを見渡す。


 あぁ、悲しいな。


 『早くしろ』


 皆んなの視線はそう言っている。


 「早くしろ、シラガくるだろ」


 大きな声で怒鳴られて、ピクリと肩を震わせる。


 あぁ、やっぱり誰も助けてはくれない。


 だからボクは下半身をだす。


 でも、ごめんね。そこから出たのは白色ではなくて、黄色いものだった。

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