わたしとあたし
ある日、わたしは可愛い子猫を拾った。
学校の帰り道、段ボールに入れられて震えていた。寒そうにしていて可哀想だったから、すぐさま連れ帰った。
つけた名前はハナちゃん。可愛くて可愛くて、どんな動作も愛苦しい。
猫なんて飼うのは初めてだったから、わたしはもう嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
でも次の日、ハナちゃんはバラバラになって死んでいた。
腕も、足も、首ももげちゃって、背中がゾワッとなる感じ。わたしは地べたに座り込んで、ガクガクブルブル震えるしかなかった。
心配して私を見に来たお母さんもびっくり、というかもう呆気に取られていたと思う。わたしがお母さんに「なんで!」って叫んだら、お母さん、「知らないわ」って言ったの。
あんまりにもその言葉が冷たかったからわたしが怒ったら、お母さんね、「可哀想だから埋めてあげましょう」だって。
お母さんと一緒にハナちゃんをお庭に埋めてあげて、わたしはおとむらいをした。
それから何日かして、お母さんが「じゃあ代わりに」と猫をもらってきてくれた。
ニーくんって名前にして、今度こそ可愛がってあげよう、そう思ったのに。
――次の日、バラバラ死体。
もう、怖かった。何が起こっているのかわからなくて、恐ろしくなった。
泣きじゃくって泣きじゃくって、お母さんになんとか宥めてもらったけど、わたしの気持ちは治らない。
それでお母さんはまた猫を連れてきたの。
真っ白な毛並みをした可愛い子猫。
「今回は絶対に犯人を突き止めてやる、これ以上はやらせないんだから」
そう思ってわたし、お小遣いでビデオカメラを買ってきて、こっそり部屋に置いたの。
「これでもう安心。サクラちゃん、一緒に寝よう?」
けれど翌朝、猫はやっぱり死んでいた。
そしてビデオカメラで見たら、驚くべきことが写っていた。
「グゲゲゲゲ。ゲゲゲ、ゲラゲラゲラゲラ」
笑いながら、わたしがサクラちゃんをカッターナイフで刺している。
サクラちゃんは「キィキィ」って変な声で苦しそうに鳴いているのに、楽しそうに笑い続けている。
「ゲゲゲ、グゲゲゲゲ。グヒヒヒヒ」
地獄のような笑い声と共に血が飛び散り、飛び散り、飛び散り……。
画面の中のわたしは、最後にカメラに向かってこう言った。
「グゲゲゲ。驚いた? 猫たちみーんなを殺してたのはあ・た・し。あなたの裏の顔ってやつかな? 次は、お母さんを殺しちゃおっと」
ここで映像は終わっていた。
途端にどうしようもなく怖くなって、わたしは泣いた。これが嘘じゃないってことを、わかってしまっていたから。
わたしの中には別の、悍ましい何かがいるんだ。そう思ったらもう耐えられない。
「お母さんごめんなさい……。猫ちゃんたちも、本当にごめん」
そして血のついたカッターナイフでわたしは、自分の喉をブスッと突き刺した。
その瞬間、『あたし』の悲鳴が、した。