フランチェスカの依頼2
◆◇◇
その後。
お屋敷へと無事に帰還した6名はさっそく文化面コラムの執筆と校正、校閲に取り掛かった。
おかげで〆切には余裕をもって、ギルド本部にコラムデータをフィードバックできたというわけである。
とりあえずは、ロズも一応の役目は果たしたということになり、この後はいつも通りのスローライフを満喫するのみとなる……はずだったが。
「もう、さすがに厄介ごとはごめんだ」
ロズはお屋敷の二階に貸し与えられた自室のベッドで寝転ぶと、問題の夕刊文化面を開いてみる。
そこにはリーザ・ウォーターズ氏の取材をもとにしたコラムが掲載されていたが、水龍岬で起きた事件などには一切触れられないまま〆られていた。
内心ではすっきりとしないが、これがある意味で大人の対応というものなのかもしれない。
リーザ氏の冥福を祈る意味でも、だ。
そんなことをロズが考えていた時。
コン、コン、コン、という扉をたたく音。
聞き覚えのあるノックだった。
「なんだろう」
ロズは新聞を読むのをやめて立ち上がると、すぐさま扉に向かう。
――ガチャリ。
扉を開けるとそこにいたのは。
頭にカチューシャを付け、細身にぴったりとフィットした淡い色合いのエプロンドレスをまとった、屋敷のメイド娘……そう、フランチェスカだった。
いったい、何の用なのだろうか。
しかし、ロズが考える間もなく、フランチェスカは口を開いた。
「ロズ様。早朝から失礼いたします。実はロズ様に込み入ったお願いがあるのです。ここでお話するのもなんですので、よろしければ一階の客間まで下りてこられてください。なにとぞよろしくお願いいたします」
……すごく嫌な予感がした。
「とりあえず行ってみるか。それが早い」
少年は手早く部屋の掃除を済ませると、フランチェスカのいる客間に向かった。
「――ええと、ロズ様。突然の報告になり申し訳ないのですが、私とロズ様でこれから異世界取材旅行に赴くことになりました。つまり、お屋敷は当分の間ですが残りのメンバーに任せることになります。留守中のお屋敷にはくれぐれもお忘れ物のないように、ロズ様には旅支度をお願いしたいのです」
「えええ……」
客間に着くなり、フランチェスカから告げられた予想だにしない言葉にロズは驚愕した。
「で、今度はなんなんだ?」
念のため聞いてみる。
すると、フランチェスカはにっこりと微笑して。
「実はカーバンクルの額に埋まっていた宝石。……あれが相当希少なものだったらしくてですね。時価およそ――――」
「次はそっちか」
ロズはうんざりと苦笑するのだった。




