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第三惑星で紡ぐ日常  作者: 火蜂
黒渦と異世界と少年
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5 未知の世界



 とーきょー何ちゃら隊隊長のユーナ御一行に連れられる事 四半刻程。

 ようやっと見えた建物は、俺の人生の中で見たことが無いくらい巨大だった。



「はぁぁ……デカいとこだなぁ……」


「ドラゴンの古代種と同じくらい大きいのではないでしょうかマスター」


「かもなぁ……」


「ドラゴンについての話も中々興味深いが、この建物は精々15階建ての防衛砦だ。東京の本部はここの数倍の規模だし、なんならあそこに見える螺旋塔も元は人工物だぞ。

 ウルカの住んでいた地域には高い建物は少なかったのか?」



 そう言ってユーナが指差したのは防衛砦の奥に(そび)える 物見櫓の様に、されど比較するのもおこがましい程に高く伸びた建物だ。

 防衛砦を挟んで見上げてもなお天辺が見える程の高さは、自分の記憶の中には比較対象が見つからない程で、あれを人が作ったという言葉で更に驚く。



「あんなに高い建物を人が作ったのか……この世界の建築技術は凄まじいんだな」


「この世界、か……そこら辺もこれからじっくりと聞かせてもらおうか。

 何はともあれ、ようこそ防衛砦へ」



 そう言って振り向いたユーナの表情は、歓迎の言葉とは裏腹に仮面のような笑顔だった。




◇◆◇◆◇




 しかし、不穏な空気が流れたのは一瞬の事だった。


 砦の入り口をくぐる前に、



「お、おい!見ろストリクス、扉が勝手に開いたぞ!」


「本当ですねマスター、あれの動力は魔力でしょうか。扉ですら自動化されているなんて、この世界は資源が潤沢なのか、此処が贅を凝らしているのか……」



 中に入れば、



「なんじゃこりゃあ……王族の屋敷なんかよりも綺麗な内装だな」


「こんな、明るいとこ……プテリゴータには……合わないかも、ね……」


「暑くも寒くもないので、ラプトルは喜びそうですが」



 なんて調子で一々はしゃいでしまい、あまりの文明格差に気分が上がってしまっていた。

 

 結局、会議室の様な部屋に案内され、腰を下ろした時には驚きの連続で疲れていた。



「はぁぁ、なんだか凄いとこに来てしまったようだな」



 そう呟くとユーナが苦笑を返してきた。



「そこまで驚くとは思わなかったが、楽しんで貰えたのなら何よりだが……

 此処に来た目的を忘れてはないだろうな?」



 目的……?


 暫し思案していると椅子の後ろで控えていたストリクスが小声で進言してきた。



「マスター、我々に対する聴取と、この世界に関する諸々の質問の事ではないでしょうか」


「あぁ、うん。覚えてる、覚えてる」



 ちょっと思い出せなかっただけで、忘れてなんかいないとも。


 取り繕った言葉にユーナは再度苦笑し、2人の少女と共に対面の椅子に腰掛けた。



「なら、早速質問を……と いきたいが、その前に改めて自己紹介をしようか。

 私の名前は、鬼怒川 悠那だ。第三防衛班班長という、螺旋塔防衛砦ではそれなりの地位に就いている」



 後半の含みのある自己紹介をしたあたり、こちら側の考えを察せられてるか?



「えっと、私は第三防衛班所属 火野アンナです」


「同じく第三防衛班所属 風早リンです」



 続いて口を開いたのは一番最初に出会った少女と、その少女と共にいた少女だった。

 

 最初に出会った少女、アンナを改めて見ると、かなり整った顔立ちをしていて、美少女とでも言うべき容姿をしていた。

 肩口で揃えた葡萄酒色の髪は、彼女の天真爛漫な笑顔と合わせて、まるで太陽のようであった。


 リンと名乗った方もアンナに負けず劣らず美形で、アンナと比べると大人っぽい少女だった。

 胸程まで真っ直ぐ伸びた淡い茶髪とツンとした表情は知的な雰囲気をかもしだしていて、アンナが太陽ならば、リンは月夜が似合いそうな少女だ。


 しかし、ユーナも、ユーナが率いていた少女達もそうだったけど、この世界の女性は美形揃いだな。

 この感じだと男もやはり美形揃いなのだろうか。

 だとすれば、平々凡々な顔つきの俺はちょっと劣等感を感じるな。



「じゃあ、次はこちら側の自己紹介だな。

 俺の名前はウルカ、姓は無い。迷宮の探索が主な仕事だな。

 一応 魔法戦士って事になるのか?探索者の中では中堅程度の実力はあると思う。

 ……取り敢えずはこんなところか? 自己紹介なんてする機会が無かったから、不足があったら後でまた聞いてくれ。

 次はストリクス……いや、この際 全員呼ぶか。

魔剣召喚(エクイプ)〉──ネクトン、プテリゴータ、ラプトル」



 俺の魔法により、虚空より現れる3種類の魔装具。

 チロチロと炎が漏れる赤い鞭、金属と岩石を圧縮したかのような弓、魚を意匠した巨大な鎚。

 それらが、赤、茶、青の光を纏って徐々に人に似た形へと変わっていく。



「なっ……!?」


「わぁぁ……綺麗……」



 光が収まると魔装具の代わりに三体の精霊がそこに立っていた。



「こいつらは精霊であり、同時に武器でもある魔装具と呼ばれる存在だ。

 俺が使役しているのはこの4体のみだ。じゃあ、それぞれ自己紹介してって」


「はい、マスター。では先ずは私からで。

 私の銘は風精剣ストリクス、魔鳥と風を司る精霊だ」


「……それだけ?」



 ストリクスは俺以外の人間への対応がおざなりなんだよな。



「他に何か伝えるべき事がありますか、マスター?」


「んー……まぁいいや、次」



 2体目に発言を促すと、ネクトン、プテリゴータ、ラプトルの3体は目配せをしあって、ややあってネクトンが口を開いた。



「はぁ……じゃあ、次はわたしね……

 わたしの銘は、水精鎚ネクトン……水生生物、水、冷却を司る精霊よ……」



 露骨に面倒臭そうな雰囲気を出すんじゃ無いよ。いや、ネクトンはもともと面倒臭がりだけども、少しは取り繕えし。



「……次は?」


 残っているのは大蛇にもたれ掛かる赤髪の精霊と、身長が若返った俺の3倍はある黒髪の精霊だ。



「アタシがいくわ!

 アタシは火精鞭ラプトル。大陸龍種、火炎、加熱を司る精霊よ。

 そしてこの子は発火、延焼を司る精霊のイグニス、見た目はスネークだけど成長すれば立派な翼龍になる、将来有望な精霊だからアタシ共々崇めなさいよね!」



 ラプトルは側に控えていた配下である精霊の紹介もあって前の2体よりかは長く喋ったな。偉そうな態度で評価はマイナスだが。


 イグニスは人間3人分程の長さ、丁度ちっちゃくなった俺と同じくらいの太さがあるスネークっぽい精霊だ。火の精霊なだけあってか体温が高めで、冬になると抱き枕にもなる優秀な精霊である。

 あと目がクリクリで可愛い。


 

「……最後はプテリゴータな」


「ウ、ウチかぁ〜……ウルウル、やんなくちゃダメぇ?」


「逆に やらなくていい理由が無えだろ」



 プテリゴータは精霊のクセに、人間と会話する時に緊張する変なやつだ。

 地の精霊は大体が陰気な気性だが、コイツは輪をかけて陰気だから、イグニスの半分ほどのデカさもある分その気性がよく目立つ。



「いいから、早くしろよ」


「うう……ウチの銘はプテリゴータ、魔虫、鉱石、圧縮、分解を司る精霊です……耐久力はみんなの中では一番あるので壁役くらいならこなせますぅ。今後ともよろしくお願いしますぅ。

 ……こんなのでいいかなぁ……?」


「ああ、お前が一番ちゃんとしてたぞ」


「はぁ、緊張したぁ〜」



 ラプトルとは逆に卑屈っぽくなったが、無駄に喧嘩腰になるより全然良い。

 これで大まかには紹介できたな。



「この4体の無愛想な精霊達が俺の主な仲間であり力だ。耳唇蝶(コイツ)みたいな下級精霊が他にもいるけど、全部を紹介してたら明日になっちまうからな、悪いけど端折らせてもらうわ。

 んで、お次はお互いに質問でもしていこうか」


「(無愛想って、マスターも似たような感じだったのにね!)」


「(マスターはあれで良いのです)」


「(なんでウルウルは良いのぉ?)」


「(いつもの……マスターだから、でしょ……)」


 後ろで精霊達が内緒話をしているが無視だ。


「悪いが先ずはこちらから質問をさせて貰っても?」



 アンナとリンは勿論のこと、この子達の上司であるユーナよりも強い自信があるが、この馬鹿デカい建物にどれ程の兵士がいるか予想がつかない今、真っ向勝負をするのは悪手だろう。


 

「ふむ、良いだろう。質問をするにしても、何が分からないかが分からないだろうからな。我々が知っている事は出来る限り話そう。そのかわり……」


「ああ、勿論 俺も本当の事を話すさ、信じられるかの判断はどうしようもないが」


「疑うわけではないがな……お互いフェアにいこうじゃないか」


「ふぇあ、ってのは分からないけども。

 そうだな……一つ目の質問はモンスターについて、だ。こっちの世界でもモンスターはよく出るのか?」



 モンスター。この世界に来る直前まで戦っていたスピログとスパロテは、どうやらモンスターハウス内にいたのがまるごと一緒に移動してきたと見て良いだろう。


 なんの根拠もないが、多分この予想は合っていると思う。となるとこの世界にモンスターはいるのかどうか、これを明らかにしておくべきだろう。

 もしこの世界にモンスターがいなかった場合、俺はよそから危険なモンスターを連れてきた戦犯になる可能性がある。いざという時はしらばっくれればいいが、きっと悪足掻きにすらならないだろう。



「モンスターというのは君らと出会う前に湧いた液体や金属の異形型魔獣の事を言っている、という認識でいいだろうか」


「ああ、そうだ。

 鉄鬼スピログと氷鬼スパロテ、アイツらみたいなのをまとめてモンスターって呼んでるんだが、こっちの世界にはモンスターはいないのか?」


「ふむ、スピログにスパロテ……か。名があるという事はウルカにとっては馴染みのある魔獣のようだな。

今回の異形達の事をモンスターと呼ぶのならこちらの世界にもうんざりする程いるとも。こちらではだいたいが獣が変異したものだから魔獣と呼んでいるがな」


「なるほどね。ちなみにアイツらの強さはこっちの基準ではどのくらいなんだ? 俺がいた世界だと銀級以上金級以下……つっても分からんか。スピログもスパロテも、そこそこ実力のある探索者なら一対一なら余裕を持って対処出来る程度だ。俺も5体程度ならまとめて対処出来る」


「ほう、先程の戦闘を見た限りかなり余裕そうだったが、ウルカ程の強さをもってしてもそこまでの脅威だったのか」


「んー、そうだな、さっきのは調子が良かったしストリクスとネクトンもいたからな。そもそも俺がこっちに来る前には200体くらいのアイツらとやり合う羽目になってボコボコにされたし、俺1人だったら数体相手するので手一杯だよ」



 やっぱモンスターハウスってクソトラップだよな。しかもスピログもスパロテも討伐難易度と発生頻度が釣り合ってないから、ただ疲れるだけだし。



「そんなに強いのか……金属の方はこちらの基準だと恐らくクラスVIII……一体に対して8人で対処してようやく駆除出来る程だろうか。液体の方は指定魔獣扱いになるだろう。特定の魔法が使える隊員じゃないと駆除出来ないだろうからな」


「なるほどねぇ…? その割には俺が起きた時にはほぼほぼ壊滅状態だったようだが……だろ、ストリクス?」


「そうですねマスター。魔力濃度が高かったので再生までの時間は短縮されていたと思いますが、それでもトドメを刺してまわる猶予はあったと思います」



 問題があるとするならば、隊員の強さだろうか。

 

 


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[良い点] 再開を心待ちにしてました。 今後の展開が楽しみです。
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