閑話 スザクとビャッコの約束
『スザク、今日こそ覚悟!フルールの魔石を返せ!』
「あら、また今日も来たの?旦那がいないところに来てくれるのはありがたいんだけど…」
白い虎が一人の女性に遅いかかる。
だが、スザクとよばれる女性は炎に包まれて、その炎の先に進むことはできない。
『あっちー!溶けてきただろ?』
白い虎は身の表面を金属に変え、炎の中に飛び込もうとしたのだが、炎の温度が高く逆にダメージを受けてしまう。
「本当に学習能力がないわね。うふふ。」
『鳥頭に言われたくないんだよ。』
「だれが鳥頭だってー!このアホ猫。お前はまたたびにでも戯れてろ!」
スザクは、白く輝く小さな塊を出して、白虎へと放っていく。
『やめろ!頼む。全身燃え尽くされる。』
白虎は全速力で空の彼方に逃げていき、白虎が逃げた方向を女性は眺める。
「本当にビャッコは飽きないわね…。」
スザクは天を仰いでいると急に立ちくらみと吐き気に見舞われる。
「う、まさか…。」
その日スザクは自分が妊娠している事に気がついた。
スザクが悪阻に悩まされていても、それをしらずに白虎はやってきた。
スザクは最初は相手をしていたのだが、だんだんと面倒になり、白虎を白い炎の塊で囲う。
『あたし、妊娠してるの!私の子が成人するまで、停戦よ。じゃないと私…。う、うー。』
『大丈夫かよ?』
敵同士であるが、長年の付き合いであるビャッコは口では心配しているが、隙あらば魔石を奪うつもりである。
『この魔石、ゲルトルーデ様に魔術を張って頂いたわ。私以外の魔力が触れれば、破壊される事になっているの!』
『な、何?お前フルールの魔石になんて事を!』
フルールとは白虎の想い人であり、このスザクの親友であった人間である。その魔石を最後に託されたのはスザクの方であった。
当時虎は大戦で主人を亡くし、凶悪で手がつけれなかった。
その心を少しずつ解したのが、フルールという女性である。
だが、彼はまだ若く、フルールが倒れると、再び我を忘れ暴れ始めたのだ。
その様子を見たフルールが、自分の魔石をスザクに託すと言ったのだ。
託されたのスザクは、虎をあしらい続け、攻撃対象を自分に絞る事で、他への被害を減らしてきたが、我慢の限界である。
お腹の赤ちゃんにも戦いは良くない。スザクは脅しをかける。
『あのね。前にもいったけど、今のあんたじゃこの魔石を守れない。だから、私が認めるまでは、指一本触れさせる気にはならないわ…。
魔術は期限付きよ…。私の子が生まれて成人するまでの間よ。』
『それってどれくらいなんだ?』
『子供が15歳になるまでよ!』
『15年か…何百年も争ってきたんだ、15年なんてすぐか…その間に力をつけてやる。』
『あんたがこれをきっかけに、成長するのを待ってるわ。』
虎が了承したが、虎は何百年とスザクに勝つことだけを目的としてきたため、何をすれば良いか思い浮かばなかった。
『そうだ。私妊娠して、あまり魔法を使えないの…。だから、魔石と一緒に私の事も守ってくれない?』
スザクは虎が何かしないよう自分に縛りつけ、虎はやる事を見つけたのであった。




