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7話 事後処理と各地の異変

無理を悟った、毎日更新無理

「……成る程、状況は把握しました」


 連絡を受け課の職員数名と駆けつけた進藤警部補は現場の後処理の指示を出し終えると榛香とエルフィリアから事件の詳細を聞き出していた。


「まずは依頼ではないのに迅速な対処を有難うございます。それと今回の異形の妖についてですが伝えるべき事があります。今回の元凶と思しき鬼らしきものについてですが、依り代になったと思われる人物は…私たち心霊課所属の退魔執行官です」

「……現役の退魔執行官が憑依された、という事ですか。彼のランクは?」

「D級です。それと本日彼と同行していた職員も居まして………無残に喰い散らかれていましたが遺体で見つかりました。そちらはC級の退魔執行官です」


 沈黙が下りる。

 心霊課の退魔執行官という事は少なくとも素人ではない。

 D級ならまだしもC級退魔執行官といえば、一流とは言わずともそれなりに妖に対する知識や抗する術を持った階級である。

 碌に抵抗も出来ずに殺されるというのは普通であるならば考えられない。

 対してD級は資格取得初心者マークといったところだろうか、最低限の知識や抗する術はあれども経験が足りないため隙をつかれることも無いではない。


「今日の彼らの行動を確認してみた所、昼食後に封印を施した場所の巡回に向かったとわかりました」

「この現場についた時には既に建物から瘴気と低級霊が漏れ始めていました。私は発生時に気が付かなかったのですけど彼女、と…紹介を忘れていました。彼女は私の友人で」

「エルフィリア=フィル=リーゼスと申します。どうぞよしなに……」


 隣から王女モードのエルフィリアがカーテシーをとりながら被せる様に自己紹介を入れる。

 青空の下で彼女の紫銀の髪は一層輝きを増しその美貌も相まって一層耳目を集める、実際現場に駆り出されていた職員も見惚れている者が多く作業が遅々として進んでいない。

 進藤警部補は立場のある矜持か浮足立つ事無く振舞っていたのだが唐突に繰り出された王族オーラに当てられ若干挙動不審になっている。


「あ、いえ、こちらこそ、自分は警視庁心霊課に所属している進藤寿といいます。どうぞ宜しくお願います」


 鯱張ったその様子にエルフィリアは不思議そうな顔をして首を傾げている。


「榛香、私は彼に何かおかしな事でも言いましたか?」


(……美人に当てられただけって言っていいのかな。進藤さんって顔も性格も悪くないけど仕事一筋で女性の噂を全く聞かないから、多分免疫が無いだけだと思う……)


 そう内心で思いながらも、とりあえず場の収拾にあたる。


「特に言ってないと思うけど、少し控えていてね。進藤さん続きいいですか?」


 声を掛けたらすぐに再起動したので大丈夫だろう。


「それでですね、彼女が気付いて駆けつけたのですけど、低級霊が建物の外まで溢れていたので外の浄化を行ってから原因を探りに建物内に入りました」

「そこであれと遭遇ですか。率直に聞きたいのですが強さはどの程度でしたでしょうか?」


 少し考える、風刃では妖気の鎧を貫けない、あれが妥当な術だったのかはわからないが霊力を全力で練った攻撃でやっとという相手、一人で戦ったら恐らく勝てない……


「少なくとも、私一人では勝てない相手だと思います。相手をした感覚やダメージが通った術から考えてB級上位からA級相当、だと思います」

「そこまで、ですか……」

「何か気がかりな事でもあるのですか?」


 少し迷うような素振りを見せた後口を開く。


「今回犠牲となった彼らですが、職務は封印を施した場所の巡回とその封印ないし結界の補修・維持でした。同様に他の封印地の巡回をしている人たちもいるのですが、その幾つかで普通では見られない異形の妖が確認されています。もしかしたら小動物などに憑依し異常進化をしたのでは?と思いまして」

「今回の件と何か繋がりがあるかもしれないという事でしょうか?」

「はい、それと一件、鬼らしきものは現れていなかったので今まで別件として捉えていたのですが、同じように巡回をしていたもう一組が行方不明になっています」

「なるほど、あれと同様の妖が発生している可能性があるのですね」


 A級どころかB級の妖でも街中に現れたならば被害は甚大になる。


「わかりました、私の方でも警戒はしておきます。兄さんと姉さんにも伝えておきますね」

「お願いします。改めて書面にして陰陽庁の方から連絡はされると思いますが予め警戒していただけるのは助かりますから。それでは私は事後処理に戻ります、今日はありがとうございます」

「はい、おつかれさまです」


 現場の後始末は任せたし、ここに残って居てもすることはないだろう。


「はい、お仕事しゅーりょー」


 ぱん、と手を叩いて終了宣言。

 一通り終わったので気が抜けた。


「もう、いいのですか?」

「うん、買い物の途中だったのに余計な仕事に付き合わせてごめんね」

「それは構いません。榛香のお役に立てたのならば私も嬉しいですから」

「ありがとう、それじゃ買い物行って帰ろっか。時間がないからそんなに見れないのが残念だけどね」


 考える事は沢山ある。

 妖のものと思われる事件の増加。異形の妖。行方不明の退魔執行官……そしてフィリアの事。

 妖の事に関しては私が気にしても仕方ないだろう、祓い浄化を行い、封印を施す、現場で動く退魔執行官としての仕事をするだけ…


 フィリアは、何を思っているのだろう。

 この世界の事、元の世界の事……とりあえず今はまだ笑っている彼女の傍に居よう、助けを求められたら力になろう、私で何の役に立てるかはわからないけど、いつか私の力を必要としてくれる予感がする。

 だから私は胸を張って彼女の友人で居よう。

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