4話 世界には世界の数だけ独特のシステムがある
「そういえば聞きたいことがあるけど、いいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
「フィリアって、もしかして良い所のお嬢様とかだったりする?」
街へと向かう道すがら聞いてみる。
出掛ける時の護衛の件とか、何気ない仕草や言葉の端々に見られる気品に一般人とは違うものを感じるので、実は少し気になっていたのだ。
「あぁ、そういえば言っていませんでしたね。向こうに居た頃は、わざわざ聞かれることもありませんでしたので」
そう言って、少し悪戯っぽく微笑む。
「ふふっ、私の家名。覚えていますか?」
「えっと、確かリーゼス、だっけ?」
「はい、そして私の故国の名前はリーゼス聖王国」
「という事はもしかして……」
「えぇ、これでも私、第二王女なのです」
まさかの王女様である。
でも、言われてみれば納得という所も……
「向こうに居た頃は、この身分もあったので友人を作るのが難しかったのです。榛香は私が王女だと知っても、友人で居てくれますよね?」
期待しているような少し不安そうな瞳に庇護欲をそそられる。
「こっちの世界だと、その肩書って意味の無いものでしょ?それに、私はフィリアだから友人になりたいと思ったの。だから王女かどうかなんて関係ないじゃない」
「ふふっ、ありがとうございます」
幸せそうに笑うフィリアの為に、街の案内をしっかりしようと一層気合が入った。
「榛香、なんですか?あのガラスで出来た高い建物は……」
「王都より人が多いです……」
「て、鉄の馬車が馬も無いのにあんなに速く、沢山……」
「何処からか、凄く甘い匂いがします。この世界のスイーツですか?榛香、教えてください!」
街を案内しながら買い物をと思っていた所、予想以上に食いつくお姫様。
これは、あれは、と目に映る物すべてが気になるらしい。
「私、カルチャーショックを受けています。甘く見ていました、異世界恐るべしです……」
どうやら一頻り興奮した後一周回って落ち着いたようだ。
「向こうとはやっぱり全然違うの?」
「はい、故国であるリーゼスの王都は大陸でもっとも美しい街と謳われて、ちょっと自慢だったのですが、この街をみせられたら、田舎町に思えてきました」
「そうなんだ、えっと、なんて言ったらいいかわからないけど、頑張って、ね?」
「えぇ、頑張ります。今は私もこちらの世界に生きる人間ですから、慣れないと」
少し遠い目をし始めたので、労って?みると、拳を小さく握り締め気合を入れている様子に、とりあえず持ち直したのだと安心する。
「そういえば世界のシステムの差異について私も聞きたいことがあったのですが」
「システム?何かあった?」
システムって何?何かあったっけ?
「何をしても出ないのでもしかしたら存在しないのではと推測したのですが……」
「何かな?」
「ステータスウィンドウが出ないのです………」
「…………ゲーム?」
まさかそう来るとは、異世界ってゲームとかでよくあるあれな感じなシステムがあるのだろうか。
「それってあれよね、自分の体力とか魔力?筋力とか敏捷性とかが数値で表れるみたいな?」
「はい、そうですけど。わかるという事は私が出せないだけですか?」
「いや、誰も出せない…かな?知る限りだとこっちの世界にそういったシステムは無いはず……」
「そう、ですか。推測していたとはいえ驚きです。この世界の人はどうやって自分の能力を把握するのでしょう」
少し考え込んでいるようだ、数値に出ない強さというのもあるから一概には言えないけども比較するのはだいぶ楽だと思う、異世界、なんて便利なのだろう。
異世界あるあるでギルドカードって無駄にハイテクな機能が多い気がするとか思考が飛んでしまった。
「まだまだ確認することが多いですね」
「そうね、私もまさかそういう質問が来るとは思わなかったから、当たり前と思っている事が当たり前じゃない可能性もありそうね」
「はい、ところで榛香、もう一ついいですか?」
「ん、なに?」
「えっとですね、街中で魔物の発生というのはよくあるのでしょうか?」
「えっ?」
「恐らく発生したての魔物の気配だと思うのですけど、此方の世界ですと街中でも頻繁に発生するものなのですか?」
「えと、魔物が何を指しているのか把握できていないけど、危険そうな感じ?」
「少し距離がありますし力は弱そうなので大きな事はできないと思いますけど、小さい芽のうちに摘んでおくのがよろしいかと」
「確認だけれど、フィリアは戦えるって事でいいのよね?」
「経験はそれ程多くはありませんが、公務で何度か。ただこの世界でも同じようにできるかわかりませんけど……」
「それはそうよね、さすがに違う世界でどうなるかなんてわからないか、とりあえず私がメインで相手をするという事で案内お願い」
「はい、こっちです」
フィリアに連れられて路地を通り過ぎ、近づいていくうちに気配を感じられるようになってきた。
この強さならまだ問題無さそうだけど、やっぱり最近多い気がする。
とりあえず考えは後、まずは目の前のことを……
「フィリア、援護をお願いね」
「はい、お任せ下さい」
視界に瘴気の靄が見えた瞬間、一気に駆け出していた。
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