9/53
第二話 おはよう
「……マフラー?」
ぱちっと少年は目を覚ました。
そのまま少しの違和感を覚えた首に手をやる。
自分でいった通り、マフラーだった。
「おはよう。おきたね」
首に巻かれたそれの伝う先を見ると、少女が微笑んでいた。
「おはよう」
少年は言葉を返してゆっくりと起き上がる。
緑色の寝袋から這いずり出て、まだぬくもりの残るそれを畳む。
ついでに少女にマフラーを括り付ける。
「なんか、もったいないね」
ふと、そうこぼした少女へ視線を移した。
寝袋は少年の慣れた手つきでしっかりと畳まれ、袋に入れられる。
「せっかくあったかいのに」
ああ、と少年は理解したというように頷いた。
「今日は耐えられないほど寒くないだろ。あと一か月もしないうちに冬になるから」
少年が話してる途中で、次に出かけた言葉を遮って少女が言う。
めいっぱいにその小さい口を広げた笑みを浮かべて。
「そうなったら……寝袋かぶりながら街の中移動ね」