第五話 しょくじ
ぺりっ――
保存食――その辺の家に入れば数百個単位で手に入るレーション――の固い箱を開ける音が鳴る。
少し古さを感じさせる布を広げた。
箱を傾けた少女が聞く。
「今日はお昼食べてないし、五個ぐらいでいいよね」
多くね? と少年は小さくつぶやいたが、少女の耳には届かなかった。
こめかみを押さえて、白く濁った溜息を吐いてから言う。
「……うん。そうしよか」
四角い大きなクッキーの様なレーションを布の上に置いた。
てってってっと歩いた少女はケーブルにつないだ立方体の角をむにゅっと押し、反対の角から水を出す。
とぽとぽとぽ――とカップへ水が注がれた。
「いただきまーす」
「いただきます」
手を合わせた。
四角いクッキーの様なレーションを二人そろって口に含む。
「こむぎこの味だね」
「そうだな」
少女はもちゃもちゃとそれを噛み砕き、入れておいた水をごきゅっと飲んだ。
「ん? いる?」
半分ほど飲み残したカップを羨ましそうに見ていた少年へと差し出す。
「ん? あ、ありがと」
対した躊躇いもなく、手に取った。
少女が唇をつけたのとは逆の場所に口をつける。
信号以外の灯りが灯らない外は雲で隠れた星さえ輝かず、もうすでに真っ暗だ。