40/53
第二十三話 やくそく
「……なあ、腹へったんだけど」
何もない虚空へと少年がつぶやく。
最初こそ少女のほうを向いていたが、こくん――こくん――と頭を定期的に上下させる少女を見て、視線をずらした。
「……ん、ぁし――た、ね?」
途切れ途切れの少女の声を聞いて、昼も夜も食ってないだろ……とこぼす。
今までにもこういったことはあり、慣れたらしい。それ以上の言葉は何も言わなかった。
「まあ良いや、日記どうする?」
日記、という言葉で定期的に動いていた首が停止する。
「やる」
短く声を漏らして、カバンを漁り始める。
寝袋をぽいっ、と少年のほうに投げてからもう一度ごそごそする。
その間に少年は寝袋を敷く。
流れるようにその中へと入った。
しばらくして、少女はノートを取り出した。
ばーん、と小さめに効果音を自前で口ずさみつつノートを地面に置いて自分も寝そべる。
重くはないが羽のように軽いわけでもない、そんな体重が少年に乗っかった。
「重い」
「しつれー、な」
ぷくっと頬を膨らませる少女に、少年は笑みをこぼす。
「んじゃ、書いといてね。――おやすみ」
「ん、おやすみ」




