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カコノキオク 零
――また、時間はちょっとだけ遡る。
白い部屋、だ。
コンクリートのそれとは全く違う、一面真っ白の世界。
冷たさが残るあの色と比べ、本当に何も感じさせない純白。
これまた真っ白なベッドの上、少年と少女が隣り合わせに寝ていた。
死んでいるとすら思わせるほど、身動き一つしない。
身動き一つ、しなかった。
今かすかに、動いた。
少女の指先がピクリ――と小さく。
時間をかけながら、少しずつ体が動いていく。
少しの時が過ぎ、ついに目を開けた。
ゆっくりと首を動かし周りの風景を確認しつつ、声を出す。
「ぁ…………あ……ぁぃう……あぃうえお」
こちらにも時間をかけ、ゆっくりと声を取り戻していった。
音が聞こえたからか、その隣で寝ていた少年も体が動き始めた。
さっきの少女と同じように、透明な束縛から体が自由になっていくかのように、体を動き始める。
「……ぉきた?」
少女が聞くと、寝たまま少年は首を前に倒した。
少女はそれを肯定と捉えたのか続ける。
「ぁしたか……ら、ぅえに、いこ?」
二人そろって、壁につけられてある「こちら地上行き階段」と書かれた張り紙を見つめた。




