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カコノキオク 4
「……ふゎ」
少女が目を覚ました。
風が少しだけ吹いてきて、髪先を揺らす。
風が来るなら光が見えるのかと上を向いてみるが、そこにはただ闇が広がっていた。
目は慣れているので暗黒の中周りを見るのに支障はないが、起きたという気がしない。
んっ、と小さく漏らし伸びをひとつ。
伸ばした指先が、少年の頬にぶすっと突き刺さり、もれなく少年も起きる。
「――っいてえ」
むっつりと顔を少しだけしかめボソリと言った。
「ああ! 朝っぱらからごめん! おはよう!」
少女は慌てた。
その慌て具合に少年は優しげに笑みを浮かべ、
「おはよ」
そう返した。
今日もまた、騒がしい一日が始まる。




