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第十話 おもいで
「……ぐっすり寝てるなー」
寝息こそ立ててはいるが、一切体が動かないのはさすがに心配する。
少女の様子を見るため、少年は手を地面につけ上半身を起こした。
太陽に照らされ、熱を吸収したアスファルトの心地よい温かさが少年の手に伝わる。
安心したように眠っている少女を見て少年は胸をなでおろした。
それにしても、とつぶやく。
「なんで、この世界、こうなったんだろう?」
昨日少年たちが泊まった家のドアは消滅していた。
そこにドアがあったかすらわからないほどに。
少年の前にそびえ立つビルには申し訳程度にガラスが付いている。
だが大半は割れて、どこかへ消えていた。
人が最後に暮らしていた時から、だいぶたっているかのように。
「……あの時が、夢だったみたいだ」