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第六話 おくがい
「……良い温度」
少年が水を出していた頃。
少女は外で風を浴びていた。
「……良い天気」
空は碧く澄み渡っている。
雲がなく、鳥も飛ばない蒼穹だ。
そよ風が、少女の伸びてきた白い髪を揺らす。
冷たい風が体を撫でた。
「…………」
また風が吹く。
風と共に好き勝手に動く髪を邪魔そうに押さえた。
「髪留め、まだあったかな?」
しばらくぽーっと立っていたが、疲れたのか近くの壁へと歩いて行き、背もたれにする。
一際大きい風が吹いて少し長めの袖が煽られ、ゆらゆら揺れた。
ふわぁ、と欠伸を一つ。
つい、うとうとし始めこくりと首が前に倒れる。
「……寝るところだった」
はっ、と顔を上げた。
白い壁の反射光で頭が冴え渡る。
立ち上がって、んっ——と伸びをする。
だいぶ明るくなった世界を見て、少女は口にした。
「そろそろ、戻ろうかな」