11/53
第四話 きづかい
「あ、そうだ。体拭く? どうする?」
食事を終え、出発する準備を終えた所で思い出したように少女が言った。
空の色は橙の光が薄まってきている。
少年が、お前はどうしたの? と言うかのように目線を少女へ向けた。
「さっき寝てるときにね」
少女は視線に気づき、そう答えた。
なるほど、と少年はうなずく。
その後、んー、と少年は少し逡巡してから答えた。
「……昨日したから別に良いかな」
言いながら少年は部屋の隅に箱をコトリと置く。
少女はその行為をじっと見つめていたが、それから言った。
「え? 今なんて言った? 聞こえなかったから外出とくね。あ、布ここ置いとくから」
返答は決まっていたといわんばかりの棒読みだ。
すぐに少女は宣言通り外へ出ていく。
そこに残された少年と立方体……そして片腕ほどの長さの布。
「そんなに、におい気になったかな……」
少年はがっくりとうなだれる。
少女は外で——無理しないで体拭きたい!って言えばいいのにこの恥ずかしがり屋さんめ、と冷たい壁に寄りかかりながら、温かい表情でにやけていた。