第一話 はじまり
作者のやりたいことをバーッて書くだけの小説なので一話一話クソ短いです!
11/11 大幅加筆修正
「ここも、暗いな」
薄明の頃。
高層ビルが乱立する都会だ。
灰色の道路が入り乱れていた外側とは大きく異なり、都市内部は高い建物が整然と立ち並んでいる。
都会とは言っても、灯りは一切ない。
夕暮れ時であるならばビルの一室が光っていてもおかしくはない。
しかし明るい色はそこになく、ただ暗色が割れた窓から覗いている。
また、道の端に生えている街灯は途中で折れたり、折れていなくても光らなかったりしていた。
まるで街自体が冷たい地面にひっそりと立つ墓地のようだった。
そんな街の死骸へと二人の人間が入っていった。
片や、巨大なカバンを背負った黒髪の少年。
かなり重そうに見えるカバンを担いでいるが、難なく歩を進めている。
片や、光沢を放つ立方体を胸に抱えた白髪の少女。
少女の頭より大きいサイズの立方体だが、しっかり抱きしめている。
少年たちは歩いている。
目指す場所なんてなく、やるべきことなんてなく、ただ日々を生きるだけ。
ただ、歩いていくだけ。
少女の先を歩いていた少年は「ここも」暗いと、そう言った。
安心とため息の混じったような声で。
今まで、同じような街をいくつも見てきたかのように。
この暗さに慣れたように。
だが、「ここも」という言葉は取り消される。
――あ、と目を見開いた少女が突然足を止めた。
「遠くのアレ、まだ生きてる」
淡くはあるが、遠くで三色に遠くに光る物があった。
赤と緑と黄に輝く信号機。
色の消えた街に存在する、人類の生きた証。
「……あんな機能に電気が、まだ通ってるのか」
目を細めた少年は、赤色に光る信号機をちら――と見た後、足を止め少女の方へ振り返った。
「なら、コイツの充電をしてやれるな」
少女が両手で抱えていた金属の立方体へと視線を向けた。
藍色の光沢が遠くの赤色を薄く反射した。
「うん!」
少女は嬉しそうにはにかんだ。
少年は照れたのか後ろを向いて歩き出す。
「ほら……行くぞ」