分岐の時
あっ・・・ヤバっ・・・
目がくらむ。
まあいつものことだ。仕事をしてる社会人なら当たり前の現象。
残業が月に90時間も越えればそうなるのは必然のことだ。
まあ、少し眠れば大丈夫だろ。体が痛いのだって当たり前・・・
デスクワークだけでなく、企画の仕事でアチコチ走り回ったせいかな。
なんか内臓が少し痛むけど気にしない。こんなところで立ち止まっていられない。
上司からは催促のメールが日に日に多くなってきている。ここが踏ん張りどころだ。
でも・・・今日はもう休んでもいいかな・・・
脳みそが働くのを拒否している。
これ以上思考するのはNGとアピールしている。
本能がやめるべきと訴えかけてくる。
そうしよう。明日4時に起きればいいんだ・・・
目を閉じる。
脳が休みを受け取る。
俺は夢の中にもぐりこむ。一時の幸せな夢の中に・・・
気がつくと白い天井。揺れる身体。
耳元で誰かが喚いている。
うるさい・・・まだ4時じゃない・・・寝かせろ・・・
痛みも取れてない・・・もう少し・・・
まだ喚いている。一体なんだ・・・
なに?病院?痛みは大丈夫?
意識がはっきりしてきた。体の内側がものすごく痛い。泣き叫びたいぐらいの痛み
驚きよりも涙が先に出てきた。
ああ、俺死ぬのか・・・
まだ理想のイリヤすら見ることなくこの世を去るんだ・・・
手術室に入る。緑づくめの医者が耳元で何か説明している。
どうせ死ぬんだ。どうにでもなれ。と自暴自棄に全てうなずいた。
全身麻酔をかけられ、そこで意識は途切れた。
目が覚めた。
ベッドの上でパジャマ姿の自分。
まだ、生きていた。
医者いわくガンらしい。
まだステージが早期の段階だったらしくそこまで私生活には影響は出ないらしい。
ただ、今の会社にこれからも勤めることは難しいといわれた。
自分には企画はとても楽しい仕事だ。
自分が1から生み出す喜びは経験者にしかわからないものだ。
なんとか戻れないかと医者に訴えてみたが、首は決して縦に振られることはなかった。
かくして、ニートの誕生である。
幸い、医療金で今後1年ほどの生活は何とかなる。
さて、どうしたものか。
仕事はなくなり、シュミのFGOの課金すらままならなくなってしまった。
一日が長く感じる。
そうだ、同人誌を読もう。
今まで忙しくて流し読みしか出来てなかったロリ本がいくつも溜まっている。
じっくり細部まで読み明かそう。
終わってしまった。
そういえば、忙しくて同人ショップにも中々いけてなくて50冊程度しかないんだった。
次はなにをしよう
そうだ、ゲームをしよう。マインクラフトだ。
俺の好きなひぐらしの鳴く頃にを再現するんだ。
分校とかカンペキな仕上がりにしよう。沙都子のトラップ配置はすでに頭の中にある。ふふふ・・・
飽きた。
一人で作っても誰も見てくれない。
モチベが保てない。困った。
だれか・・・見てくれる人
一緒にこの楽しみを分かち合える人はいないのか・・・
インターネットでぐるぐる探していると、ひとつのサイトに目が止まった。
ニコニコ生放送。
そういえば、顔なじみの生主さんが色々教えてあげるって言ってたな。俺でも出来るかも・・・
でもトーク力とかないし・・・
生主に相談してみたところ、
「うちのような雑談放送でも人きてるんやし!いけるぞ!」
とあっさり勧められてしまった。
乗せられてしまえばあとは早いもので、コミュニティも作り放送画面も作った。
今まで暇な時間パソコンをいじり、企画で考える力をつけたおかげだろう。
さて、いよいよ放送だ。何人来るのだろう。まあ最初だし10人くらい来れば上等か。
彼はまだ知らない。
そんな中、初めての放送で来場者数100人越え、コメント500越えを達することをまだ知らない。
大手生主が誕生したことを彼はまだ・・・知らない。