表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪を背負った異端児の学園生活  作者: ジャスタウェイ
3/3

3話「本の虫」

ケロッグ軍曹とケロリン王女は恋に落ちていた。

立場上王女と軍曹が結婚など世間では認められていなかったが、2匹は愛し合っていた。


親は反対し2匹を引き裂こうとあらゆる手段を行使する。周りの住民からは軍曹に対しては執拗ないじめが繰り返し行われていた。


軍曹「もう僕らの住める土地ではない・・・2匹でこの街を出よう・・・!」


軍曹は駆け落ちを決断した。王女は二つ返事で了承した。


見知らぬ土地。見知らぬ建物、文化。

今までのように地位は全く通用しない。宿を探しては次の街へ。お金が無くなりかけたら2匹で日雇いの仕事をこなす。

過酷な日々だったが2匹は幸せな日々を送っていた。


そんな幸せな日々はそうそう続かなかった。王都より軍曹の生死問わず(デットオアアライブ)がかけられていたのだった。

罪状は王女の拉致誘拐。2匹は「もっと遠くの国へいこう」そう話していたその時・・・事件は起きた。


ケロッグの大冒険|(中間) ~完~


「うおおおおおお!!気になる!!」


俺は本を片手に叫んでいた。


「なんであの女上巻と中巻しか持ってないんだよ!!ありえん!」


他人から物を奪っておいて図々しく批判した。


「もう1回読むか・・・」


上巻を手に取る。もう何週目だろうか・・・それほど面白かったのだ。おそらく向こう側の世界ではベストセラーは間違いない、と俺は誇らしげに予想した。


「ん?」


気配を探る。

こちら側の世界に誰か向かってきているのがわかった。 この前の令嬢だった。前回と違ってお付きの爺がいなかったが、令嬢に相当レベルの高い加護バフがかけられていた。

面倒くせぇ・・・と思いつつ持っていた本を隠し、入口まで向かった。


現場に着くと、令嬢がキョロキョロと辺りを見渡していた。何の用か知らないがこの世界に正常者を入れるわけにはいかない。


「おい、二度と近づくなと言ったはずだが?」


俺はナイフをわざとらしくチラつかせ、ゆっくりと歩み寄り相手を脅しにかかる。


令嬢「あ!貴方は・・・!お逢いしたかったです。」


この世界には全くといっていいほど似合わないニッコリとした笑みを浮かべ頭を軽く下げた。

眩しすぎる笑顔にそっと目を反らす。俺はこの謎めいた笑顔が苦手だった。


「ここは無法地帯だ。その程度の加護バフで通用する世界じゃないぜ?」


嘘をつく。この頽廃した世界で令嬢にかけられている防護シールドを破壊できるのは多くて俺を含め3人くらいだろう。


令嬢「今日は貴方にどうしてもお聞きしたいことがあってここに参りました。答えを聞けたらすぐ帰ります」


この流れで問いかけられる質問というのは大概ロクなもんじゃない。


「聞くだけ聞いてやろう」


何を問いかけられても軽く流して帰らせるつもりでした。しかし、簡単な質問で俺は苦しめられた。


令嬢「こちらの世界で満足してますか?」


「・・・・・・・・・・」


色々な思考がさえぎり、言葉が詰まる。俺にとっての満足とは何か?金、食事、娯楽、そんな簡単なものでは済まない。

無二の友人への”罪滅ぼし”がしたい。ただそれだけだった。小さい頃からずっと一緒に遊んできた友人を殺しておいて裕福な生活などできるはずがなかった。

またあの頃に戻りたい・・・楽しかった日々に・・・・。


「満足してる。 答えたからこれで帰るんだろ?」


令嬢「はい。ありがとうございます」


令嬢はなぜか満足げな顔をしていた。たったこれだけの質問で?

心理分析は得意なほうだがコイツの考えることだけはさっぱりわからなかった。


「じゃあな。犬に噛まれて死なないように気を付けるんだな」


この女にできるだけ関わらないほうが良いと踏み、早々と背を向け家の方へ向かおうとした。


令嬢「あの!この間の本の続きがあるんですけど いりますか?」


 足がピタッと止まる。まさかケロッグ軍曹の大冒険|(下巻)か!?。

無言で振り返ると令嬢の手には俺が最も望んでいた本がそこにはあった。


 ニッコリとした笑顔をしながら両手で本を差し出していた。

バツの悪い顔をしながら令嬢に近寄り片手でパシンと奪い去った。

背を向け右手に本をかかげながらケロッグ軍曹の決め台詞ぜりふを言ってやった。


「この本に免じて今日のことは許してやる」


 颯爽さっそうと歩く俺の後ろで女がフフッと笑っていた気がしたがどうでもいい。今のこのワクワク感はどの感情にも勝るのだから。


令嬢が帰ったことを確認し、家路についた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ