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挟まれた地球。

 

 郁多天袈、短編二作目!

 

 笑いたい奴には笑わせておけ。

 恋愛とは、壮大である。

 

 

 

 いつの話かは知らないが、あり得なくもない話。

 

 大切なのは、水金地火木土天海。

 

 

 

「あーもー、鬱陶しいなぁ! 邪魔なんだよっ‼」

 

「まったくだわっ。どうにかならないのかしら……」

 

「この地球はよ!!」「この地球はっ!」

 

 一体いつから怒り続けているのだろう。地球に何の罪があるのか。それは、地球の存在する位置が、怒声をあげる二個(・・)の間を丁度隔てているという状態である。宇宙条例で、一定の大きさを超える()は他の星を超えられない決まりであるため、どうしようもないのだ。

 

「ああぁぁ! 愛しの金星(ビーナス)よ! オレは早く君を抱き締めたい!!」

 

「ワタシもよ火星(マーズ)! 貴方と情熱的な口づけがしたいわっ!」

 

 気持ちの悪い事を大声で言い合う二つの星。そうする事でしかお互いの愛を確かめ合う事が出来ないからである。一体どうやってその願望を叶えるのかは定かでないが、叶う事は宇宙条例が改正されない限りあり得ない事は確かだ。

 

「そうだ、金星! オレは最近Cometter(コメッター)始めたんだ! だけど、お前の電波に合わせても、地球の電波に遮られて届かないみてぇなんだよ! ほんっとにありえねぇよなー金星よぉ!!」

 

「それはかなりショックだわ! 火星の言葉をワタシ一人で堪能できたかもしれないのに……ワタシもとりあえずアカウントだけ作っておく!!」

 

 常に大声を張り上げて話す火星と金星に挟まれるのは、生物が生存する地球。彼は生まれてこの方言葉を発した事は無く、日々ひたすら我慢している。過多なイライラが地球の内部にまで影響を及ぼし、活火山がどうだの温暖化がどうだの海面上昇がどうだの言われてしまっている。

 

 そんな事気にするはずも無く、火星と金星は喋り続ける。愛の言葉がほとんどを占めるが、どうでもいい内容もたまには話す。

 

木星(ジュピター)の奴が土星(サターン)のあのわっかで遊んでたらしいんだけどよぉ、フラフープしてたら、ウエストが七センチもくびれたらしいぜ!! オレも最近少したるんで来たし貸してもらおうか……ってだから星越えれねぇよってな! あっはっはー!」

 

 一週間程前、火星がけたけた笑いながら話した内容である。どうでもよすぎて逆に突っ込み所は沢山あった。『わっか簡単に外せるのかよ! くびれたってか削れたんだろ! 星の七センチなんかニンゲンのミクロ以下だろ! どうたるむのかも見当つかねぇよ!』等々、突っ込むたびに気温が上がって台風も三つ四つ生まれた。

 

 今日も地球は苦悩する……。

 

 

   *   *   *   *   *

 

 

「決めたぞ金星‼ オレはCometterの機能で刻み貯めた彗星(コメット)をお前に送る! ざっと千個くれぇあるが、地球の破片諸共お前に届けてやる! オレの愛をお前だけにっ‼」

 

「嬉しい……待ってるわ! 宇宙サーバが停止しても、貰い受けるから!」

 

『ちょ、え……はああああああああああああああぁぁぁっっ!?』

 

 地球の生涯で初めて発した言葉は驚愕の悲鳴。そんなものは気に留めず、愛に生きる星こと火星は一斉送信を念じた。巨大な山を形成していた彗星には、それぞれ違った愛の言葉が刻み込まれている。それら一つ一つがぶるぶると震え、一番近くで電波を発信する地球めがけて光速で突っ込んでいった。

 

『ぐわぁぁあああぁぁぁあああああぁぁぁああああぁぁ!!』

 

 ――普段は俺が突っ込んでいるのに。

 

 火星と同じくらいつまらない事を思いながら、地球は崩れていった。生物なんてものは当たり前に絶滅したが、地球自身はひとかけら残った――丁度、富士山と同じくらいの体積の破片となってギリギリ生き残ったのだ。

 

「うおおぉっ! 届けええええぇぇっ!!」

 

 彗星はあらかた地球とぶつかって消滅し、残りの彗星の大部分も金星までは届かず消え去った。生き残ったのは彗星で形成された山の一番下に並んでいた一つのみ。なんとか持ちこたえた、愛の言葉が添えられている彗星がついに金星に届いた。

 

「わああっ! ついに、火星からの愛の言葉が……」

 

 歓喜に包まれながらメッセージに目を通した金星の表情は、なんとも言えないものに変わっていく。苦笑いだが赤らんだ顔、だろうって感じだ。星には顔も体すらも無いから確実ではないが。

 

「わ、わ……っ、分かってるくせにいいいいいぃぃぃ‼」

 

 金星から放たれた返答の彗星は極小な地球を難無く越え、そのまま光速で火星の中心を貫いた。ばきばきと割れてどんどん崩れていってしまう。その光景を見る余裕は金星には無く、ただ『今何色のパンツ履いてるんだ……??』という破廉恥なメッセージをひたすら反芻(はんすう)していた。

 

 火星を破壊した彗星には『履いてません\\\\』と刻まれていた。地球に与えた被害が丸ごと返ってきた火星だったが、金星のどこかやらしく思える返事への高揚で辛さなど無かった。

 

「あ! 小さくなったから宇宙条例関係無いじゃん! ぃよっし、これでいつでも抱き締められるぜぇ金星!!」

 

「貴方って星は……ずっと、ずっと愛してるわよ! 火星っ!!」

 

 地球の挟まれる事に悩まされる日々が終わる。同時に、宇宙の体系が変わった瞬間だった。

 

 

 

 ご読了感謝です!

 一作目とは全く違った話に挑戦しました。

 本人(本星)達だけは真剣です。

 

 

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